MAIL
気がつけば俺は、高校時代の友達の門田京平──ドタチンに電話をしていた。
例えるならお父さん、あわよくばお母さんみたいな存在。
俺が悪いことをして注意はしても、なんだかんだ言って俺のことを見捨てたりしなかった。数少ない友達の1人である。
『もしもし?臨也か』
3秒ほどのコール音の後、ドタチンが電話に出た。久々に聞いたドタチンの声はひどく安心し、シズちゃんのことでいっぱいだった頭の中にすこし余裕ができた気がした。
「ド、タチン……」
しかし、俺の出した声が思いの外震えてしまっていて、その異変に気付いたドタチンが心配そうに『…なにかあったのか?』と問い掛ける。
「……うん……」
俺は素直に肯定する。
しかし、ドタチンは何も追求せず、「そうか」とだけ言った。
ドタチンのそういうところも、好きな部分の1つだ。俺が話したくないことを無理に聞かない。甘えたいときは「コラ」なんて言いながらも甘えさせてくれる。いい友達をもったなあ、なんて今更だけど思う。
『今日の夜、会いに行ってもいいか?』
突然の提案に、俺の口からは「えっ?」とのマヌケな声が出る。
なぜ?と問えば、
『久々に酒でも、さ』
ドタチンは薄ら笑いを混じらせながらそう言った。
それもドタチンなりの優しさなのだろう。とても暖かい。
確かに最近はお酒すら飲んでいないし、俺自身としても飲んで、少しでも気が紛らわせたらいいかもしれない。
そう思った俺はドタチンの誘いに乗り、今日の夜会うことになった。
ドタチン、ありがとね。
なんて──それを言うのはまだ少し早いかな。
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20110730