渡さねぇよ | ナノ


渡さねぇよ!!3








「九十九屋ァ……俺帰ってもいい?いいよね?」
「お前がいないと話にならないだろう」
「いやさっきから俺取り残して話してんじゃん」

もうこの状態が続いて何十分たっただろう。
2人が熱心に話している間に、俺は人間観察や手遊びをしてみたけれど、さすがに無理がある。
つまり簡単に言ってしまうと、この状態で俺は半々飽きてしまっているということだ。

「うぅ……暇だ」
「我慢しろよ」
「はぁ?なんで俺がそんなこ……」

そんなことしなきゃならないの?そう言葉にしようとしたところで、ふと見覚えのある横顔が俺の目に入ってきた。
あの姿はもしかして。
俺の大好きな──。

「やっぱり!ドタチンだ!ドタチンがいる!ねえシズちゃん、見てほら!」
「は?」

状況を把握できていないシズちゃんを無視し、俺は無理矢理シズちゃんの腕を引っ張ってドタチンの居る方向に向かせる。

「おーいドタチンドタチン!」

俺は大きく片手を振り、ドタチンに声を掛けた。
すると、ドタチンはすぐ俺の存在(+おまけ)に気付いてくれて、やさしく微笑みながら俺の元へ歩いてくる。

しかし、

「手、離してくれない?九十九屋」
「断る」

今すぐにでもドタチンに飛び付きたいところなのに、九十九屋が俺の手を握り、それができなくなってしまった。ドタチンに向かって駆け出すところを捕まってしまったのだ。
振り払おうとしても、意外にも力が強く、俺は諦めるしか他がなかった。

「よ」
「ドタチン!久しぶりだね!俺すっごく会いたかった!」
「相変わらずだな。それより……」

ドタチンの目線は明らかに九十九屋の方へ向いている。
当たり前だろう。ただでさえ怪しい格好をしていて不審者そのものなのに、男である俺の手を離すまいと握っているのだから。しかし、いい加減手を離してほしい。

「えっとね…こいつは…」
「恋人さ」
「馬鹿か誰が恋人だ。こいつはただの知り合い」
「へぇ……」

まだドタチンは疑いの目を向けているが、それがきっと妥当だ。だって九十九屋だもん仕方ない仕方ない。

「なあ──誰だかは知らないが」
「なんだ?」
「そろそろ臨也の手を離してもらおうか」

その様子じゃ、好きで繋いでるわけじゃなさそうだしな。
そうドタチンは、真っすぐな視線でキッパリと言い放った。
九十九屋はそれはクク、と喉を鳴らして笑ってから、仕方ないとばかりに手を離した。
初めてまともに手を繋いだというのに、相手が九十九屋。なんだか神妙な気持ちだ。

「やっぱドタチン好き…男前……」

そう呟くと、ドタチンは少し照れたような顔をし、その後頭を撫でてくれた。

「てめぇ……そんなに門田が好きか」
「?好きだけど」
「チッ、わかってたけどよ……ぜってー見返してやる」

シズちゃんはそんなことをぶつぶつ言いながら、俺の方を睨んでた。
シズちゃんは相変わらず気持ちが読めないけれど、ドタチンはやさしいし男前だし大好きだ。

女の子にもモテるだろうなあ。






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続きます

20110724
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