一緒だったら | ナノ

コンビニ



既に深夜を廻り、静けさのある夜道には虫の鳴き声がよく目立つ。
月の光と電灯を頼りに、シズちゃんと俺はその道を歩いていく。

「……1人でコンビニくらい行けるのに」
「危ないだろうが」

心配性め。
今のシズちゃんにはその一言が1番合うと思う。
いちいちついて来なくてもいいのに。一人暮らししてた時だって、1人で夜道歩けたんだからさ。
でも、なんだかんだ言ってやっぱり嬉しい。一緒に並んで歩ける事。それだけで胸がドキドキする。

「それにしても、コンビニで飲み物買うだけだったのに結構買っちゃったね。いちご牛乳とか、パンとか」
「あとアイスもな」

さすがに買い過ぎたかもしれないね。シズちゃんと俺は笑い合う。半々戦争のように買いあさった。俺がカゴに入れればシズちゃんが入れ、シズちゃんがカゴに入れれば俺も入れる。その繰り返し。
お互いにムキになっちゃってた。それは今も昔も変わらない。

そんな重いコンビニ袋を、シズちゃんがほとんど手に持っている。俺が持っているのは軽い袋だけ。
といっても、シズちゃんから手渡されたのがそれだったため、たぶんさりげなく気を使ってくれたのだと思う。……紳士的な?

「あ……もうすぐで家着いちゃうね」

気が付くと、既に住んでいるアパートの近くを歩いていた。
見慣れた景色。
少し遠回りすればよかったかも。なんて、今更言っても遅いのだけど。

「手、つなぐか」
「……なんで?」
「ダメか」
「……しょうがないなあ」

俺の気持ちを察したのだろうか。シズちゃんは俺に手を差し出し、それを俺は自分の手をぎゅっと手と手を絡み合わせた。

シズちゃんの手の方がデカくて、なんだか悔しい。でも、俺はそんな手が好きだ。手だけじゃないけど。
それでも、一緒に住んでいても中々手を繋ぐことはないから、ドキドキドキ。胸が高鳴る。

「臨也、キスしたい」
「ちょっ…調子乗んな!」
「したくないのかよ」
「………帰ったらいっぱいしてあげる」










20110619
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