こっちに | ナノ







こっちによこせや!








「……あれは」

俺の視線の先。そこには、門田と遊馬崎と狩沢のお馴染みのメンバー。
その姿を見る限り、どうってことのないつもの光景で、にぎやかな声まで聞こえてくる。どこか楽しそうな雰囲気を醸(かも)し出している。

───なのに。

「……あいつ……!」

あれは正真正銘、俺が嫌悪する臨也の姿。どこか臭ぇと思ったら、ここにいたのか──!
俺のイライラは一瞬にして沸き上がる。しかもなんだ、あんなちやほやされて、門田に頭撫でられて喜んでんじゃねーよ!
狩沢にはケツ撫で回されてセクハラされてるし、でもノミ蟲はそれに全く気付いてねえし!……あーもう!

「おい!」
「げ、シズちゃん…」

俺が近付くと、臨也はこそっと門田の後ろに身を隠す。今はその行動すらも気に入らなくて、拳を握る力も強まった。
そんな時、

「静雄さん!」
「は?」

門田たちと一緒にいた遊馬崎が俺の前に立ち、俺も衝動的に立ち止まる。そこをどいてくれないと、門田の後ろにいるノミ蟲を捕まえられないのだが。
臨也は中々やってこない俺に違和感を覚えたのか、門田の後ろからひょっこり顔を出し、「何してんの」という顔でこちらを覗く。うぜぇ!

「悪いがそこ退いてくんねえか。ノミ蟲いるだろ」
「そーいう訳にはいかないっス」
「だよだよー!」

狩沢も遊馬崎と同じように賛同する。俺は訳がわからず、「は?」と眉をしかめる。
だから俺は直接的に「どういうことだ」と問うと、狩沢は少し考えてから、

「シズちゃんばっかりズルイじゃん。私たちだってイザイザと話したいもん。ね、ゆまっち」

そう言って遊馬崎に同意を求めると、遊馬崎もうんうん頷いて「そうっス。独り占めは実によくないっスよ」と口を尖らせて俺に言った。

だが、理由を聞いてもいまいち意味不明で、ますます疑問が募る。そんな時、俺は何気なくふと臨也の方に視線をやった。しかし、今まで門田後ろに隠れていた臨也が姿を現していて、油断しているのか、呑気に笑い合いながら談話していた。………こいつ。

「臨也、頭に糸屑がついてる」
「マジで?どこ?」
「とってやる」

そんな会話が耳に届き、苛立ちのままにチッ、と舌打ちをする。そんな怒りとは裏腹に、狩沢と遊馬崎は俺の元を離れ、「イザイザって本当に睫毛長いよね〜」なんて言いながら再び臨也に顔を近付ける。

──クソ、早く臨也から離れろよ!

そんな事を思ってしまっている自分にも気付かずに、俺はハラハラしながら臨也とその様子を見ていた。

「ドライブでもしないっスか臨也さん。寿司でも食いましょーよ」
「え?」
「そうするか。そういうことなら早く乗れよ」
「そだよーイザイザ!エンリョしないで!」

臨也を押し込むようにワゴンに乗せる。そんな臨也は戸惑いを隠せないでいるようで、頭にはてなを浮かべながらも流れに乗せられているようだ。

「というわけで静雄、またな」

窓から顔を出し、門田は俺に向かって軽く手を振ると、間もなくワゴン車はこの場所を離れて行った。

「……邪魔、しやがって」

嫉妬によく似る感情がじわじわと俺を襲っていく。
だが、"よく似る"ではなくこれはれっきとした嫉妬なのだが、そんなの考える隙間もないまま、ついにその感情は爆発した。
「うぉらあああああ!!」

──その後、ワゴン車に標識がぶつけられ、使い物にならなくなったのは言うまでもない。

あ、もちろん、臨也は俺がうまくさらい出した。









お姫様扱いされる臨也さんってどうですかー!ちなみに私は大好きです。
保田さんリクエストありがとうございました!
お持ち帰り、リテイクはご本人様に限りOKです。

20110519
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