I | ナノ







‖‖熱い、暑い








とうとう夏がやってきた。
暑くて暑くて暑くて、蒸し暑い夏が。

「シズちゃん……」

床に寝転がり、うちわで身を涼めながらシズちゃんの名前を言う。
対して、シズちゃんはかったるいという声で、「んだよ…」と渋々ながらに返事をする。

「なんでこんな暑いの…」
「…知るかアホ」

おっしゃる通り。
シズちゃんの狭い部屋で体を冷やす方法といえば、扇風機とうちわのみ。(エアコンなどは元々この部屋には存在しない)

しかし、気温が上がり続けているためなのか、この暑さは変わらなかった。ないよりはかなりマシだが。

「ねえ、なにか他に体冷やす方法ないの」

一度寝転がってた体を起き上がらせ、シズちゃんに問う。
このままじゃ暑すぎて耐えられない。
シズちゃんは「そうだな」と言いながら、頭を捻らせているのか顔をしかめる。

「怪談はどうだ」
「なんだか道逸れてるよ」
「違うか…」
再びシズちゃんは考える。
俺はその間うちわでぱたぱたと扇ぎ、一人涼しくしていると、シズちゃんが「俺にも風を当てろよ」と言うので仕方なくシズちゃんにうちわを使い、そよ風を送る。
ふん、特別なんだから。

「あ、そうだ」

何か思い付いたのか、シズちゃんはその場を立ち上がり、キッチンの方へ足を運ぶ。なんなんだ。

少しするとシズちゃんは元居た場所に戻ってきた。
何かを持っているそんな事を思っていると、不意に口の中スプーンが突っ込まれた。

「!?」

冷たくて甘い味覚が舌に残る。俺はいきなりの出来事に「えっなに…」との言葉を漏らした。
すると、シズちゃんは、

「アイス。うまいだろ」

と言って、明るくはにかんだ。
夏の暑さじゃない、体温から沸き上がってくる熱さが体を渦巻く。
心なしかドキドキと心臓が高鳴っていて。

「うん……」

シズちゃんのせいでより熱くなってしまったじゃないか。










20110616
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