まさいざ | ナノ





大人なので





今日で俺は20才である。精神面はともかく、年齢上大人であり、成人だ。

「臨也さん」
「ん」

臨也さんの家に上げてもらって、ソファでくつろぐ俺と臨也さん。目の前のテーブルには煎れたばかりの紅茶が置いてある。

しかし今日はこうやって3時のティータイムをしにこの場所へやってきたわけではない。20才になったこの日に来たのも偶然ではない、必然である。

今日俺は──俺は、臨也さんに告白をしに来たのだ。
だというのに、

「好きです」
「何が?」
「……紅茶が」
「へー」

こんなやり取りばかりが続いている。しかも何度も延々に。
俺は告白したくて焦ってるっていうのに、そんなの構わず臨也さんは呑気に紅茶を飲んだり本を読んだりしている。

──やっぱり忘れたのか、あの日のこと。

実は、臨也さんに告白するのは今回が初めてではなかったりする。それは高校生のとき。
今より若かったし、単刀直入に「アンタが好きだ!」って気持ちを伝えた。
正直、まともな答えは期待していなかった。だってあの臨也さんだし、大笑いしながらバカにすると思ったからだ。
しかし、その予想はガクッと外れた。
『はっ…!?臨也さ…』
告白してまず俺に見せたのは、大粒で正真正銘の涙。臨也さんの目からぽろぽろと溢れる水に、俺は確かに焦っていた。

『、っ〜……』
『……あの』

いまだ劣ろえることのない涙を流す臨也さんに何もできぬままその場へ立ちすくんだ。俺は戸惑いが隠せない。だって、臨也さんが泣いているところなんて初めてみたし、何より泣くなんて思っていなかったから。
そんな時、不意に臨也さんが涙声で『…ね』との声を漏らす。

『正臣くん、が20才になったら俺、いい。許す。その時まで、好きでいてくれる、なら……』

大粒の涙をながし、臨也さんそう言った。俺は頷く。
そして俺は今までずっとその言葉を胸に抱き、現在に至る。臨也さんの言葉の意味を"君が20才なるまで待って"と受け取ったからここまでやってこれたのだとも思う。
しかし、臨也さんの涙は頭から離れることはなく、20才になった今でもたまに思い出したりする。だが、なぜあの時臨也さんが大涙を見せたのか、俺はわからないままだった。

俺は駄目元で話を切り出してみる。どうしても確認したい。そう思ったから。

「覚えてますか、俺が高校生のときのこと」

ピクン、臨也さんの肩が微かに跳ねる。どうやら覚えていることは確かなようで、ほっと胸を撫で下ろす。
俺が「覚えてるんですね」、そう言うと、臨也さんは言葉を返さずに無言を突き通した。

「……ねぇ」

臨也さんが沈黙を破る。
顔は下の方へ俯いていて、表情がいまいち確認できない。
俺は心臓を高鳴らせながらも「はい」と平静を装い相槌を取る。

「今、も……好きなの?」

その、俺のこと。恐る恐るというように臨也さんは問う。臨也さんは俺の顔を伺うようにちらりと視線をこっちに移し、目が合った途端にわざとらしく紅茶の入ったカップを手に取った。
そんな臨也さんに対し、俺は臨也さんの方を真っ直ぐに見つめ、「はい、もちろんです」と迷うことなくハッキリと質問に答えた。

──だってアンタしか見えない。









最後はちょっと臨也さんを取り乱させてみました。
全然大人なかんじじゃなくてごめんなさい!
みつまめさんリクエストありがとうございました!また、リクエストされたご本人様に限り、リテイク・お持ち帰り可能です

20110514
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