そううけ2 | ナノ





君が好き!






「臨也さーん!」
「帝人くん」

ゼェゼェと息を切らしながらこちらへ向かってくるのは、汗水垂らした帝人くんの姿。学校に用事があったのか、制服をきている。少しすると帝人くんはあっという間に俺たちのところへたどり着き、遅れながらも「こんにちは」と、挨拶をする。

「……思った通り。やっぱり僕が一番乗りじゃなかったようですね」
「?どういう…」

なんのことだ。さっきから俺ばかりが話について行けてない気がするのは気のせい?普段なら逆の立場のはずなのに。なんだか屈辱的で嫌なんだけど。

「あの、これ臨也さんに」
「え」

帝人くんから急に声を掛けられたかと思うと、帝人くんからなんだか重そうな紙袋が俺の手元に渡された。

「なにこれ」
「帰ったら開けてみて下さい」

にこ。キラキラした明るい笑みのはずなのに、どこかサディストな雰囲気を漂わせる。この袋の中身からは金属音みたいな物音もするし、なんだか嫌な予感しかしない。

「…すごく残念なんですけど今日は早く帰らなきゃいけないので、僕はこれで。今度臨也さんちに伺いますね!静雄さんはお気をつけてお帰り下さい」

そう言うと帝人くんは俺の目に映らなくなるまでこちらに向かって手を振り、さわやかな笑顔でこの場所を去って行った。それにしてももらった袋が重い。
なんて思っていたら、シズちゃんがその袋を何も言わずに持ってくれた。やだ優しい。
だから不本意ながらも助かったから、「ありがとう」って言おうとしたらそれを遮って「テメェがひょろひょろだから持ってやっただけだ」と悪態をつくので、とりあえずシズちゃんの足を思い切り蹴った。

「こんにちは」
「あっ、正臣くん」

次に現れたのはいつもの姿の正臣くん。とはちょっと違った。なぜなら、頭にひとつのパーティーハットをかぶっていたからである。そう。とんがりぼうしのアレ。さすがのシズちゃんも驚いた様子で、「なんだそれ」と呟いていた。

「臨也さんが誕生日だと聞き付けてやってきました」
「そのぼうしは?」
「ハッピーバースデーってことで。俺としては全然ハッピーじゃないですけどかぶってみました。どうですか。似合いますか」
「…うん?」
「あと、はい」

正臣くんから渡された水玉模様の小包。雑貨屋さんで買ったのか、なんだかキャラクターも描いてある。

「言っちゃうとその中には3本くらいピンが入ってます。あとの5つは髪ゴムとか色々」
「……」
「ちなみにピンは髪を止める方のピンです」
「知ってるよ」
「特別可愛いやつ選びましたから」
「……ありがとう」

しばらくすると正臣くんもここを立ち去り、そのあとも次々にいろいろな人が俺の誕生日を祝ってくれたけど、その時ずっとシズちゃんが傍に居たことが一番の気掛かりだった。

そしてそれから少し時間がたってから、今まで黙っていたシズちゃんが突然俺に声を掛ける。

「どうしたの」
「……そろそろ帰る」

それだけ俺に伝え、持ってくれていた荷物を俺に渡すと、シズちゃんはあっという間に人ごみの中へ消えていって、なんだか一気に寂しくなった。
そんな自分自身に鳥肌がたったけれど、やっぱり寂しいのは変わりなくて。

無意識のうちに一番祝ってほしい人がシズちゃんになっていたのかもしれない。
今気付いても、明日になれば誕生日は終わる。何をしても俺が生まれた日は今日だという事には一生変わりはない大事な日。だからこそ、もう一度。

「臨也」

涙目の瞳を袖で拭い取り、俺はぱっと声のした方を振り向く。そこに居たのはさっきまで俺の思い描いていた人物。シズちゃんだった。

「俺だけテメェへの誕生日プレゼントないってのは変だろ」

右手に持つ何本ものバラの花束を俺に差し出す。まさかわざわざこれを買いに行くために嘘をついて俺から離れたの?だとしたらそれは。

「ベタ、だね」
「うるせぇな…これしか思い浮かばなかったんだよ」

うれしくなかったか?シズちゃんからそう聞かれて、俺は必死に首を横に振った。
来てくれただけでもうれしいのに、こんなことしてくれてうれしくないわけがない。

「ちょっと寂しかった」
「ああ」
「本当はすごく」
「ああ」
「今日はシズちゃんと一緒にいたい」
「ああ」
「…だめ?」
「良いに決まってるだろ」

その答えを直接聞くと、なんだかすごくうれしくなって、胸がきゅってなった。
その思いが溢れそうになった俺は、シズちゃんに歩み寄り、そのまま大きい胴体にぎゅっと抱き着く。シズちゃんの体温は温かくて、正直心地好かった。

だが、いきなり抱き着いた俺をシズちゃんはそれを驚く様子を見せず、むしろ待ちわびていたかのように俺を引き寄せ、俺の髪にそっとキスをする。

「好き?」

そう見上げながら問い掛けると、シズちゃんは穏やかにやわらかく微笑んでから、「愛してる」と答えた。
続きは2人きりで。








臨也さんお誕生日おめでとうございます。ずっとこの日を待っていました。
どうしても幸せにしたくて総受けという形になりましたが、やはりシズイザオチです。
大好きだもの!

2011.5.3
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