さくらなみき | ナノ






ひらひら








ここのところ徐々に気温がと共に暖かくなってきた。こんな日はつい体がだらけてしまいそうだし、気をつけなければ。
でも、春が来た。
そう実感させられるこの感じは嫌いじゃない。

「桜がきれいだね、シズちゃん」

俺の恋人である臨也が楽しげに声を掛けた。臨也はにこにこと微笑みながら共に桜並木を歩く。

実は今日、桜を見に行こうと臨也に誘われてここまでやってきた。
最初から期待はしていたが、やはり来てよかったと思う。
臨也もどうやら同じ気持ちらしく、時々桜を見上げては見とれるように目を細めた。

「春っていいな」
「ああ」

周りを見渡せば、白い蝶々や色とりどりの花。他の季節とはまた違う良さを引き立させている。

「そういえば、来月俺の誕生日だから祝ってね」
「おう」

臨也はまるで子供のような笑顔でにかっと笑う。俺と付き合うようになってから毒気のある笑みは段々と消えていった。
最初は何をしても胡散臭いあの笑顔しか見せなかったから、それだけ心を開いてくれたという事だろうか。
そんなこんなで過去を思い返していると、急にぴたっと臨也と足が止まった。

「どうした?」
「ねぇ、俺の事好き?」

臨也は小首を傾げて問う。
いきなりどうしたんだ。そう臨也に聞くと、「急に不安になった」と目を逸らしながら言葉を返す。

「心配すんな、嫌いになったりなんかしないから」
「じゃあ好き?」
「好きだって言ってんだろ。なんなら抱きしめて安心させてやろうか?」

そう半分本気で言うと、臨也は少しの間考えてから「恥ずかしいからやだ。……でもその分帰ったらさ、抱きしめてね」と、ふにゃりと笑いながら言った。

そんな臨也に対し、当たり前だろと微笑めば、臨也は少し照れたような表情で「ありがと」と独り言のように呟き、再び俺たちは歩き出す。

そんな時、一枚の桜の花びらが臨也の肩にひらひらと舞うように落ち、俺はその花びらにさえ妬いてしまった。

臨也の近くに居ていいのは自分だけ。そんな俺はどうかしてるのだろうか。













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