大好き | ナノ






有り続ける幸せ









ある日の夜、突然インターホンが室内に鳴り響いた。こんな時間に来客なんて珍しいな。

そのような不信感を抱いていると、ドアをドンドンドンという乱暴なノック音が続けて聞こえ、益々眉を歪めた。
これはれっきとした近所迷惑ではないのだろうか。
俺は少々苛立ちを感じながらも、恐る恐る扉を開く。

「……シズちゃん?」
「よう」

目の前は金髪の人物。
そこに居たのは正真正銘シズちゃんの姿だった。

俺はまさかまさかのシズちゃんの登場に驚き、目をまるくした。
俺がシズちゃんちに押し付ける事は会ったけど、シズちゃんから俺の家に来ることはなく、俺自身もその事は特に気にしていなかった。
それに、恋人になってから俺の家に来るのは初めてだから、突然来られると……心の準備がまだ不十分だ。まあシズちゃんならそんなのお構いなしだと思うけど。

「早く入れろよ」
「あーうん?」

俺は流れのままにシズちゃんを自宅に上げた。まだ状況が把握出来ていない俺を無視し、シズちゃんはズカズカと広間へ足を運ぶ。

一体なにしをに来たのだろう。しかもこんな夜に。

シズちゃんは何度も来た事あるのではないかというくらい慣れたそぶりで、ソファへ腰を降ろした。
まあこんなの今に気にする事じゃないからいいけど。

「コーヒーでも飲む?」
「おう」

砂糖多めでな。
シズちゃんは俺に注文を入れると、俺も頷いと了承すると、コーヒーを煎れにキッチンに向かった。

……若干シズちゃんの視線を感じるけど、知らんぷりを貫き、黙々とコーヒーに集中した。

しばらくしてから俺は頼まれた通りのコーヒーと、俺の分のコーヒーを持ってシズちゃんの待つ場所へと運び、机にコーヒーの入ったコップを並べ、シズちゃんは軽く「サンキュ」とだけ礼を言う。ちょっとときめいたのは内緒だ。

そして俺も後からシズちゃんの隣に座り、このまま黙っているわけにもいかないので、思い切ってシズちゃんに声を掛けた。

「……あの。どうしてここに来たの?」「テメーに会いたかったから」
「一昨日会ったじゃん」「今会いたくなったんだよ悪いか!」

シズちゃんに逆ギレされた。この場合喜んでいいのか、怒った方がいいのか微妙だ。……素直に言っちゃうと嬉しいけど。

「別に悪いわけじゃないよ?」
「そーかよ」

シズちゃんは出されたコーヒーを喉に通す。一応甘めにしたけど、自信はあまりないのが本当のところ。

「…まずい?苦すぎた?」
「ああ」
「えっ」
「嘘だバーカ」

なんだよ。真面目な顔して嘘をつくスキルがいつの間にかシズちゃんに身についていたらしい。

俺が不機嫌になってプイ、と顔を背けると、シズちゃんは「嘘だっつってんだろ。うまいから安心しろ」と笑いながら言った。しね。

そう心のうちで嫌みや愚痴を言っていた、その時

「うわッ!?」

急に体が横に倒された。
脳は一気に動揺で思考をなくし、何があったんだと瞳を開けると、シズちゃんが上に覆いかぶさっていた。なんだか険しい顔をしている。

「な…何?」
「一緒に住もう」
「は?」

いきなり何言っているんだ。
俺はきって今まぬけな表情をしている。
とうとうシズちゃんの頭がイッちゃったのではないか。俺の頭も十分混乱しているけど。

「だから一緒に住んでくれっていってんだ。今日はそれを言いに来たんだよバカ気付け!!」
「……」

気付くわけなかろう。そんなそぶり一つも見せていなかったじゃん。
そう悪態をついても、心を落ち着かせる事はできなかった。
脳は既に理解し、徐々に頬が熱くなっていく。今日エイプリルフールじゃないよね?

「マジで?」
「おう」

シズちゃんは真剣な顔で俺を見つめ、俺はただどうしようもない気持ちに襲われていた。恥ずかしさと嬉しさと。
俺の答えはただひとつ。

その答えを体で表現するように、俺は自分からシズちゃんに唇を重ねた。

「…いいよ」











甘い甘い恋ですね
(チョコにも砂糖にも負けないさ)







俺の答えを聞いたシズちゃんは、恥ずかしさの混じった笑みを見せ、俺の耳元で「愛してる」と囁いた。くすぐったさもありながらも、やっぱり嬉しさは変わらなかった。

俺もだよ。
大好き。大好き。

愛してる。

どんな困難があっても、この幸せはずっとずっとずっと忘れる事はないだろう。

俺はそれを信じてる。











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