小型カメラ
とある事に痺れを切らした俺は、以前から聞きたかった事をついに九十九屋に問う事にした。
折原臨也『九十九屋、お前は俺の家にいくつ盗撮器を仕掛けているんだ?』
その言葉を発言してから間もなく、九十九屋真一からの返答がチャット画面に更新される。
九十九屋真一『いきなりどうしたんだ?』
まず最初の九十九屋の発言は疑問の混じる文。
俺は知らんぷりをする九十九屋に少々イラッとした。
知ってるくせに。
折原臨也『お前が知らないわけないだろう』
今日探しだしただけで5つもの小型カメラが見つかった。場所は不特定でバラバラ。風呂場にまでも設置してあった。
しかもご丁寧に盗聴器付きの最新型。高そうな高品質。
誰がこんなものを。
なんてね。少なくとも九十九屋以外にも思い当たる人物は居る。
なぜならば俺に恨みをもっている人は少なくないからだ。
だが、おかしいのは毎日のようにそのカメラが少しづつ増え続けるという不可思議な現象だった。
確かに家を空ける時もある。主に仕事とかで。
しかし、それなりの十分な警備が整っているはずなのだ。
でも、その行動が実行可能な人物が約一人存在する。
その人物像が真っ先に思い浮かんだのがアイツ、九十九屋真一だった。
悔しいけど、アイツは俺よりたくさんの情報を持っている。
それはもう様々なジャンルを取り揃えて。
それに、アイツは俺の私生活や行動。プライベートすらの情報を得ていて、ある意味怖い存在だ。
九十九屋真一『俺を疑っているのか?ひどいな、折原は』
折原臨也『じゃあ誰だっていうんだ』
九十九屋真一『さあな。でもその小型カメラの中には偽物も混じってるからな。もうひとつ言ってしまうと、まだ16台残ってるぞ』
折原臨也『やっぱりお前じゃないか!』
俺が怒りを添えた発言すると、九十九屋からすぐに『俺が犯人だといつ言った?ヒントをあげただけじゃないか』と、油を売るようで否定的な言葉が返ってきた。
呆れる。
これでは勝ち目も何もない。
そう思い、思わずハァ…と大きなため息を吐く。脳はもう諦めモードがオンだ。
折原臨也『…わかった。もう疑わない』
九十九屋真一『そうか。ならいいんだ。だが』
折原臨也『?』
九十九屋真一『俺はお前の事が心配で堪らないんだ。これだけは覚えておいてほしい』
折原臨也『……どういう意味?』
九十九屋真一『さあな。そろそろ取引先との待ち合わせの時間じゃないか?』
折原臨也『…そうだった』
九十九屋真一『じゃあな、折原』
……
……
俺は逃げるようにこのチャットルームから去る。
俺はパソコンから離れ、待ち合わせ時間に遅れないよう早々と池袋に出かける準備をし始めた。
それにしても、九十九屋が放ったあの意味はなんだったんだろうか。
カメラ16台か。
…………帰ったら探そう。