今日だけ、甘い嘘を
・エイプリルフールネタ
「シズちゃん。俺に好きって言って」
「は?」
4月1日の今日。
俺はわざわざシズちゃんを呼び出し、いつもとは似つかないことを言った。当然にもシズちゃんは「は?」と疑問の混じる声を漏らし、眉を寄せて不愉快さが滲み出ている表情を見せた。
「……いいじゃん、エイプリルフールなんだから」
「………」
シズちゃんは俺をじっと凝視し、しばらくするとシズちゃんは心配なんてしてないくせに「どうしたんだよ」という言葉を俺に投げ付けた。
「……嘘」
「嘘でも、その言葉はないだろ」
ズキ。
その言葉が心を切り裂く。
きっと、"好き"という言葉は大事と言いたいのだと思う。
それもわかるけれど、今日くらいは"好き"と一言、言ってほしい。
わがままなのはわかっている。だけど俺はシズちゃんの事が―。
俺はなんともないフリをして笑顔を見せた。愛想笑いなんて慣れてるから、こんなのラクチン。なんとも悲しい特技だ。
「……ねぇ、俺に嘘ついてよ」
「………」
「……ねぇ」
「…わかった」
シズちゃんは険しい顔をしながら、首を縦に頷ける。
俺はシズちゃんに聞こえないような小声で「ありがとう」と呟き、再び笑みを見せた。
「臨也、」
「………」
「好きだ」
今日だけ夢を見させて。