幸せの溢れた朝 | ナノ








せの溢れた朝









チュン、チュンチュン。
そんな爽やかな小鳥のさえずりで、ゆっくりと目を覚ます。
眠い……。だが、起きない訳にはいかず(二度寝すると昼まで寝ている時があるため)、渋々と重たいからだを起き上がらせる。

眠たさの残る目をごしごしとこすり、脳もやっと通常運転してきたところで、ある事に気付いた。

ここ、シズちゃんちじゃん。

という事を。

なんでここにいるんだっけ?昨日確かにシズちゃんちに遊びに行ったけど、泊まった覚えはないよ!

再び周りを見回してみると、やはりシズちゃんちであり、俺んちではない。
疑問で頭がいっぱいいっぱいになっていると、ガチャ、というドアノブの音が聞こえ、その後に玄関の方からシズちゃんがやってきた。

「起きたか」
「あーうん。昨日さ、もしかしてそのまま寝ちゃった?」
「ああ」
「……すみませんでした」
「何で謝んだよ」
「だってうっかりっていったって迷惑だったでしょ」
「別にそんな事思ってねえから気にすんなよ」

それでも納得出来なくて、感情のままに反論しようとすると、「黙れ」と言葉を遮られ、言われた通りに仕方なく口を閉じる。
気にすんなって言われても、気にするわ!シズちゃんはどこで寝たんだろ。俺がベッドを占領してたとかだったら余計罪悪感を感じる。

「あのさー…聞きたいんだけど、シズちゃんはどこで寝たの?」
「は?普通に手前の隣に」
「……マジで?」
「嘘つく必要がどこにあんだよ」

えええええ。待ってよ。
これダブルベッドじゃなくてシングルベッドだよ!
大の大人が堂々と寝れるほど大きいわけじゃないよ!

それなのによく2人で寝れたなあと思う。
きっと至近距離だったんだろうな。寝ててよかった。意識があったらきっとドキドキして眠れなかった。

とりあえず一安心でき、さっきより罪悪感も薄れてきた。
昨日うっかり寝てしまった事には未だ後悔が残っているけれど。

「せっかくだから飯食ってけよ。顔洗って来い」
「いいの?」
「おう」
「……じゃあお構いなく」

食事の用意を始めるシズちゃんに対し、俺は洗面台の方へ足を向けた。

自然にも目に入ってしまう洗面台とセットになっている鏡。

「あれ?」

そこに移しだされてた俺の首筋に、よくわからない赤い痕がついている事にふと気付き、思わず疑問の混じった声がもれる。よく見ると2個3個と様々なところにその痕が存在しており、さらに首を傾げた。

「なにこれ?」

指でその刻まれた赤い痕をなぞる。虫刺されかと思ったけど、ふくらんでなるわけじゃないから違うかなあ。

「どうした?」
「え?いや別にたいした事じゃないんだけど」

キッチンの方からシズちゃんが心配してやってくる。独り言を漏らしていたからかな。

「この虫刺されみたいな痕が気になって」
「あーそれか。ああいや、手前は気にすんな」
「?そうだね」

シズちゃんにそう言われた事もあり、俺は特に気にしないで蛇口から水を出し、顔を洗う。





その痕がシズちゃんが付けたキスマークだというのに気付いたのはそれからしばらく日にちがたってからだった。












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