抱擁 | ナノ








酸っぱい抱擁
・臨也の体を触る要素有り
・ただし工口ではない












今の状況、それはシズちゃんに頬やら腕やら体やらを何処となく触られ、たまに不規則に抱きしめられている。
さっき、どんな因縁だか知らないが、「触りたい」と頼み込んできて、俺はもちろん丁寧にお断りした。

「ね……そこ」
「は?」
「…く、くすぐったい…」
「おー…悪い」

突然そんな事を言ってきた事が気になり、俺は素直に「なんで?」と問うと、シズちゃんは「本番での備え」との冗談を抜かしたので、とりあえず殴っておいた。
それでもめげないで願い下げてくるシズちゃん。その姿を見て俺は仕方なく、嫌々小さく首を縦に振った。
今思えばそのまま放置しとけばよかったのかもしれないが。

「だから、そこ、触んのしつこいんだけど」
「あ?ああ、」

どんどん好き勝手させてるうちに、服の中に手を偲ばせてくるようになったシズちゃん。……しかしなぜこうなった。体は向かい合せ。緊張する。「てかさ、何してんの、シズちゃんは。触るの限度を超えてるでしょ」
「愛撫だ」
「………」

どこを触られるかなんて気まぐれなシズちゃんだ。予測なんか出来ないし、仮に予測したってハズれるにきまってるし無駄だと判断した。
するとシズちゃんの手が不意にするりと俺の胸の部分に移った。

「心臓…」
「う、うるさい!黙れ…!」

たぶんシズちゃんは、俺の心臓の早まりの事が言いたいんだろう。
なんだよ、せっかく俺がどうってことないようなフリしてたのに、台無しじゃん。
シズちゃんはそれを知ると、何を思ったのか疑問だが顔をニヤつかせ、俺にがばっと抱きついた。

「なっ…」

触られただけでもあれなのに、抱きつかれたらさらに心臓が加速するに決まってるだろ!う、心臓がバクバク高鳴りすぎてなんか苦しくなってきた。

ていうか、付き合ってからずっと初めての事ばかり経験していて困惑してばかりだ。
でも、どんどん恋人っぽくなるのに対し、怖いって気持ちもある。初めてだから先が全然見えないんだもん。「ぽい」じゃなくて、恋人なんだけど、未だ実感がわかない。
だから俺は不安になって、何かの拍子で嫌ったりしない?って恐る恐るシズちゃんに聞いてみたら、「ありえねーな」ってキッパリと断言してくれて、再び力を込めて、ぎゅって抱きしめてくれた。
俺は言葉に出来ないくらい嬉しかったし、不安は一気に吹き飛んで、すごく安心した。

単純かもしれないけど、そんなシズちゃんが好きで、やっぱり、幸せで。俺、こんなに幸せでいいのかな、ってつくづく思った。




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