7.謎の女性

その半日、偵察に向かったアイク達は一人の女性を連れて戻ってきた。
その女性は緑髪のロングヘアー、橙色のドレス。眠っている姿は気品溢れていた。

今はミストと一緒に看病をしている。


「この ひと よくなる?」

「大丈夫だよネーヴェル。ちゃんと息してるし、今はぐっすり眠ってるだけだよ」

「そか、よか た」
ふと無意識に女性の髪に触れてみて、とってもさらさらして触り心地よかった。
すると今まで閉じていた瞼がゆっくりと開いて…


「あ…」
女性と目が合った。

「ミスト めが、さめたみたい」
水を変えに行ったミストが女性に駆け寄り、一言交わすと外へ向かった。団長に報告しに行ったのだろう。
体勢を起こして、少しフラついた女性の体を支えながら、二人でホールへ向かった。











――――――

間もなく場にグレイルとアイクがやってきた。ソファーに座っていたネーヴェルはそっと女性の側を離れミストの横へ並ぶ。

「具合はどうだ?」

「え、あ…はい、大丈夫です……あなたは?」

「俺はグレイル。傭兵団の長だ」

「グレイル様… 私を助けてくださったのですね? なんとお礼を申し上げればよいか…」

「おっと。あんたを見つけて連れて帰ったのは、息子のアイクだ。礼ならこいつに言ってやってくれ」

「いや、俺は別に…」

「アイク様ですね…? ありがとうございます」
お礼を言いながら頭を下げた女性の表情は明らかに冴えていなかった。

「さっそくで悪いが聞きたいことがある。あんたは一体、何者なんだ? なぜあんな場所に倒れていた?」

「……」

「あんたを拾ったあたりはクリミア近衛騎士とデイン軍が激しくぶつかりあったところのようだが、あんたはクリミア王家ゆかりの物か?」

「ひよっとしたら俺達が力になれるかもしれない。話してくれないか?」
グレイルの問いに彼女は眉を落とした。少し躊躇ったように口ごもると、胸に手を当てグレイルの方を真っ直ぐ見つめ口を開いた。


「……私を救ってくださった、あなた方を…信じます」
一つ呼吸をすると、彼女は名乗った。





「私は、エリンシア・リデル・クリミア。クリミア王ラモンの娘です」



自らをクリミアの王女、だと。



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