4.ご飯が美味しい
「オスカー、まだお昼の残りある?」
「ミスト…夕飯まで待てないんですか」
「違うってー 私じゃなくてネーヴェル」
テーブルに忙しなくキョロキョロしているネーヴェルを指差す。
「じゃあ簡単に作るよ。少し待ってて下さい」
ダイニングに居座るネーヴェルに言い、即座に手を動かす。
その間ミストがネーヴェルの横に座り傭兵団の仕事内容を詳しく話してくれたり、団員の事も少しだけ話してくれた。
「出来ましたよ。さあ、召し上がって下さい」
「あ…り がとう」
野菜のたっぷり入ったスープにふわっとしたオムレツがネーヴェルの目の前に置かれる。始めて見るオムレツに興味を出しつつ若干危うい手つきでスプーンを入れた。
「………………………」
「おや、気に召さなかった?」
「おいしい!! と ても おいし いよ」
オムレツを口に入れた途端黙り込んだネーヴェルだったが、オスカーに尋ねられて目を輝かせながら食事にありつく。
あまりの勢いにミスト達は顔を見合わせて笑う。
ネーヴェルが食べ終わる頃、セネリオが食堂へやってきて咳払いをして三人の注目を集める。
「団長にはお話しておきました。許可されたので“一時的に”団員になれます」
「本当!? やったねネーヴェル!!」
「う…ん?」
抱き付いて喜ぶミストにまだ実感が湧かなくてきょとんとしているネーヴェル。
「いきなりな話だね、彼女には何か事情があるのかい?」
「記憶喪失らしいみたいです。知人や記憶を取り戻すまでここに置いてもいいと」
「そうか…なら新しい団員に自己紹介しなくてはね、私はオスカーだ、よろしく頼むよ」
一際大きな手が向けられる。首を傾げるネーヴェルにミストが「手を出された時はね、こうやって挨拶するんだよ」とネーヴェルの右手をオスカーの手を握らせた。
「どうやら教えることもいっぱいありそうだ」
そう言って苦笑を浮かべるオスカー達の心境などネーヴェルが分かるはずもなかった。
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