雨の唄
いただきもの
二色の想い
「買い物についてきてくれる人ー!」しんとした空間に響く可愛らしい声。それに答えたのはエントランスにたまたま居た二人だけ。
「しゃーねぇなぁ。行ってやるよ」
「俺が行く」
「リンドウさんと…ソーマ?」
「嫌ならいい」
ソーマの言葉に主人公は嬉しそうに首を横に振った。隣で何故かリンドウがため息をついている。ちなみに主人公の“買い物”とは洋服の買い物のことである。アナグラの面積増大に伴って造られた“ショッピングモール”的施設が主人公の目的地なのだ。
「あそこに行くんだろ?」
「そーだよ」
「…チッ」
「いやソーマ何で今舌打ちした?もしかして本当は行くの…―」
「嫌じゃない、ほらさっさと行くぞ」
ソーマは先にエレベーターに乗り込んでしまう。リンドウがやれやれと呟きながらそれを追った。
―今日は何か変だ―
主人公はそう思わざるを得なかった。
――――――
「うー…なんだか殺気が」
小さな声で呟く主人公の後ろから放たれているのは鋭い殺気。何故かソーマだけならずリンドウまでもが放っているような気がする。賑わう店と店の間を歩きながら主人公が首を傾げたその時、
「わっ…あぁ!」
ずざぁという音と共に主人公が躓いて床に転ぶ。とっさに誰かが右腕を掴む。
「気をつけろよ」
「ん、あ…ありがと、ソーマ」
ソーマはふっと笑ってそのまま主人公の右手を握った。主人公は思わず真っ赤になる。
「ソーマ…?」
「何だ」
「リンドウさんが見てるよ?」
「知るか」
――――――
「うーん…どっちにしようかなぁ…」
「主人公には赤のが似合うな」
「青だろ」
選んでいるのはただのパジャマ。なのに外野二人はかなり真剣だった。主人公は気まずい雰囲気に飲まれつつも鏡に向かい何度もパジャマを合わせる。
「あ…!そうだ」
主人公が思いついたように手に取ったのは…黄色いパジャマ。この時、後ろから二人のため息がはっきりと聞こえた。
「ねぇね、今日二人共どうしたの?」
「ん?なんもねぇよ」
「何でもない」
「そっ、そう…」
――――――
しばらく歩いていると突然リンドウが小さく横から「好きだ」と耳打ちをしてきた。ぴくっと反応すると抱きしめられた。
「お前、ほんっとに可愛いのな」
「なっ…リンドウさん!?」
ちぅ、と小さな音をたてて頬にキスされる。
「おい!」
「どうしたソーマ」
「主人公から離れろ…!」
「はいはい」
ソーマが静かに怒鳴った。リンドウが渋々といった様子で主人公から離れる。
「主人公、こんな色男に騙されるな」
「えっ?」
それはないだろ、とリンドウの呟きが聞こえた。しかし、ソーマの真剣な目つきに吸い込まれる。
「俺の傍にいろ、守ってやる」
「……えっ…?」
「主人公が好きだ」
ソーマの声が頭の中に響く。合わせて先程のリンドウのものも聞こえる。ふわりと揺れる意識の中で主人公は言った。
「えっと!私は、どっちも好きですっ…!」
―……………
「え」
「は…?」
「…あれ?」
目の前で神機を担いだリンドウとソーマが首を傾げる。途端に心臓がやかましくなってきてるのに気付く。
「夢…?」
「おはよ、主人公」
「寝ぼけやがって」
リンドウとソーマを見比べて主人公は呟く。
「あんなわけ、ないに決まってるじゃんね」
あとがき
「みつりんご。」のえこ様より。相互リンク記念にと、くださいました!
ソーマが優しいです。しかも積極的です。人目さえ気にしません。(夢ですけど。)
「俺の傍にいろ、守ってやる」だなんて…!
格好良すぎですっ。
リンドウさんとの板挟み、オイシすぎますね!
こちらこそ。
えこ様、本当にありがとうございました!
これからもよろしくお願いいたします。
2011/09/23 天音ミツル