雨の唄

短編 GOD EATER / GOD EATER BURST

「リンドウさん、ヴァジュラ付き合ってください。」

「おう、いいぞ。」



「ボルグ・カムラン行くんです。手伝ってくれませんか?」

「ああ、任せとけ。」



「これからコンゴウ堕天なんですけど…。」

「よし、一緒に行ってやるよ。」



「…………。」

Noと言わない理由

うーん…と、ナギサは複雑そうな顔をする。


ばつが悪いというか、納得がいかないというか、不思議で仕方ないというか。

それら全てが合わさったような、複雑な表情だった。


「なんだ、どうした?」

そんな彼女の様子に気付いたリンドウが訝しげに尋ねる。


ナギサは自分より背の高いリンドウの顔を見上げた。

そして真面目な顔で彼女は言う。


「リンドウさんは優しすぎますね。」

と。


あまりに唐突な言葉だったため、リンドウは「ん?」という表情になった。

ナギサが何を意図してそう言ったのかわからず、反応に困る。


「どうしてそう思うんだ?」

とりあえず、その考えに至った理由を聞いてみた。


「だって。何度も任務に付き合ってくれるから。…それも二つ返事で。」

「なんだそんなことか。」

意外なくらい答えが単純で、リンドウは思わず吹き出す。

そんな彼の反応に、ナギサは納得がいかないらしかった。


「そんなことって…。ソーマなんて、なんでもかんでもまず断るって言いますよ!」

…と、具体的事例を挙げてリンドウは人が良すぎるのだと力説する。


彼はちょっと困ったように頭をかいた。


(人が良すぎる…か。そんなんじゃないんだよな…。)

そう声には出さずに呟いて、苦笑する。


どうやらナギサは、リンドウが彼女の頼みを一切断ろうとしない理由を、人が良いからだと思っているようだ。

これでは、どれだけ任務に付き合っても、彼の意図する効果は得られそうにない。


どうしたものかと、半ば頭を抱える。

そんなリンドウの反応をどう捉えたのか、ナギサは申し訳なさそうな顔をした。


「…自分で頼んでおいてなんですけど、いやなときはちゃんと断ってくださいね。」

「…あー、ナギサ。何か勘違いしてないか? 俺は別に、人が良いわけじゃないぞ。」

「そんなことないですよ。だって、いくら任務と言っても、これは私のわがままじゃないですか。」

そのわがままに付き合ってくれてるんですから…と彼女は言う。


「あのな、ナギサ。…いやじゃないんだ。」

「でも…」

「お前のわがままならな。」

「……え?」


ナギサが目を丸くする。

驚いてはいるが、どういう意味なのか、きっとよくわかっていない。


もうここまできたら、言ってしまうしかないと思った。


そっと、ナギサの頬に触れる。

彼女は一瞬ぴくりと反応したが、避けることはしなかった。


そんな彼女をじっと見詰め、改めて伝えてやる。


「お前だけだ。二つ返事で頼みを聞いてやるのは。」


自分がお人好しでは決してありえないということを。


ナギサは困惑を極めたような表情で、黙ってリンドウを見上げ、目を瞬かせた。

リンドウの言った言葉の真意を理解していないんだろう。


察してくれてもいいのに。

どうしてこんな時ばっかり鈍いんだろうと、リンドウは苦笑いした。


「お前の頼みなら何でも聞いてやるよ。だから──」


ぐいと、頬に添えた手はそのままに、もう一方の手で彼女の腰を掴んで引き寄せた。

突然のことに、ナギサは身を固くする。

数センチしか離れていないごく至近距離で、彼女の瞳を真っ直ぐ見詰めた。


「…他の奴には頼むなよ。」


そう、いつもより低い声で囁くと、ナギサは顔を真っ赤に染める。

にやりと、彼は不敵に笑った。


「意味、わかってるか?」

「い、み…?」


彼女は今のこの状況に赤面しただけで、意味なんてわかっちゃいないことは知っていた。

でも、なんとなくは察し始めただろう。



リンドウが、決して彼女の頼みを断ろうとしない理由。

ナギサに気付かせたかった彼の真意。


それは──



「お前のことが、好きだってことだ。」
〜Fin.〜

あとがき

彼が絡むと、なぜかちょっとアダルティな雰囲気になる気がします。
このネタなら、たぶんソーマでもやれたんじゃないかなぁとは思うけど、あえてのリンドウさん。
…というか、もともとソーマで書いたものがあるんですが、後になって変えました。
2011/4/3
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