雨の唄

短編 GOD EATER / GOD EATER BURST

お願い、ソーマさん!その2

「ソーマさん、お願いしますよ〜!」

「…断る。」


「今回だけ!…ね?」

「断る。」


「少しだけ!」

「断る!」


「ほんのちょっとでいいんです!」

「こ と わ る!!」


ソーマさんはいつにもまして頑なに私の要望を断固拒否する。

しかも何を警戒してるのか、私の方をちらりとも見ようとしない。

困ったなぁ…と、途方に暮れそうな時だった。

私にとっての救世主がひょっこりとやってくる。


「おいおいソーマ、そう言ってやるなよ。」

「リンドウさん!」

「ちっ…。」

笑顔でやってきたリンドウさんに、ソーマさんはものすごく嫌そうな顔をして、思いっきり舌打ちした。


「どうせ最終的にはお前の方が折れるんだ。…早く楽になっちまえよ。」

「悪いが今回ばかりは拒否させてもらう。」

「ソーマさん…。」

「くっ…、こっちを見るな!」


ソーマさんは視界に私が入らないよう、ぐるっと顔を背けた。

そんなソーマさんの様子に、リンドウさんは肩をすくめる。


「…やれやれ。一体何を頼んだんだ?」

「これです、リンドウさん!」


待ってましたと言わんばかりに、私は両手でお皿を捧げ持った。

お皿に乗っているのは、大小様々かつ形も様々な、無数の黒い物体。


「……んー…。とりあえずこれが何なのかをまず聞いていいか?」

「クッキーです!」

「どこがだ!黒焦げだろ、どう見ても!」

リンドウさんの質問にキッパリとそう答えた私に、ソーマさんがツッコミを入れる。


「いいえ、クッキーです!何が何でもクッキーだと言い張ります!」

「…それで、そのクッキーとやらをどうしたいんだ?」

「もちろん、食べてほしいんです!」

「……………。」

「あ。リンドウさんでもいいですよ?」


リンドウさんは固まった。

笑顔で。


そしてくるりとソーマさんに向き直る。


「あー、ソーマ君。上官命令だ。…食え。」

「ふざけるな。…テメェ、自分に火の粉が降りかかる前に処理しようとしてんじゃねぇよ。」


「ぜひ食べて感想をください!」

「食べなくても味ならわかる!」

ひたすら苦いに決まってんだろうが!!と、横目でこちらを見るに留め、ソーマさんは怒鳴った。


そんな言い方しなくたって…。


「ひどいです、ソーマさん…。」

目を伏せて、くすんと一つ咽いでみれば、ソーマさんはぐっと怯んだ。

明らかに、ひどいのはお前だ…と言いたいのを我慢している2人には気付かないフリを決め込む。


「…ソーマ、覚悟を決めろ。」

「ちょっと待て!リンドウ、テメェもだろうが!」

「ソーマさん…。」

「なんで俺だけなんだ!?」


別に、食べてくれるならソーマさんでもリンドウさんでもいい。

でもリンドウさんはきっとさらっとごまかして逃げちゃうだろうとわかる。

そうなるとソーマさんにも逃げられてしまいそうだ。

だからここはソーマさんに的を絞って、リンドウさんに説得を手伝ってもらう作戦を決行することにした。


「据え膳食わぬは男の恥だぞ、ソーマ。」

「使いどころが違うだろ!」

「お願い、ソーマさん…。」

「ぐっ……。」



クソッタレ!と文句を言いながらも、結局ソーマさんが全部食べてくれたのでした。
−了−

あとがき

彼女の子犬のような眼差しには誰も逆らえまい…。

ただ「断る」を連呼させたかった。
そしてお人好しなソーマをいじめたかった。
…それだけでした。
2011/06/19
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