梓と | ナノ
この気持ちはなんだろう。…あれ、このフレーズ確か何かの歌の歌詞に使われていたような…ああそうだ「春に」だ。…いや今はそんなことどうでもよろしい。心の奥底に住み着いた、このもやもやゆらりとした気持ち。これは一体なんだ?
「あ、梓くん」
「あ、先輩。こんにちは」
ほら始まった。どくどくと脈打つ心臓。最近、先輩を見るとどうも鼓動が早くなる。息がつまる。呼吸の仕方を忘れる。とりあえず何か会話をしようと口を開いて、閉じた。どうしよう、なにを、話せばいい?
戸惑っていると、先輩の後ろから緑頭の見慣れた先輩が現われた。
「おーい、なーにしてんだよ。次移動だぞ」
「あれ隆文くん。先行ってていいよって言ったじゃない」
「ばーか、お前一人置いていけるかよ」
「おい誰が迷子だこらああああ!!」
「一言も言ってねーよ馬鹿!!!」
ぎゃあぎゃあと廊下の真ん中で喧嘩しはじめる二人。ああ仲良いんだな、と思ったときにつきり、と胸が痛んだ。同時にどっしりとしたものが心臓を蝕んでいくような感、覚。
「……っ…」
息が、苦しい。未だ口論しあう二人を見ているのが辛くなって、僕は気付いたら背を向けて走り出していた。
「梓くん!!?」
「木ノ瀬?」
二人が僕を呼ぶ声が聞こえた。
「……っなんだ、これ」
正体不明の感情は、掻き立てられる焦燥感と不安、苛立ち、色々なものが交ざって入り組んで溶け合って、僕の心に鎮座した。これは一体、なんなんだ。
僕の世界を浮遊する、迷える君への恋心
----------君二、願ウ様へ提出!
この度はこのような素敵企画に参加させて頂けて光栄です。ありがとうございました!
また機会があったら参加したいです。
飼沼理瀬