vol.06



体育合同とか聞いてないから。本当に、勘弁してください。

「ぬっははー!満ーー!」

「ぎゃあ!髪ぐしゃぐしゃにすんなってー!」

「ぬははは!」

「あううう」

体育だからとせっかく二つに結った髪が、翼の手によってぐしゃぐしゃにされる。あああちくしょう覚えてろよ翼。いつしか報復してやんよ…!

「ったく何してんの、翼」

「あ、梓!」

「梓助けて!」

「わ、」

翼のホールドをくぐり抜け、ぴゃっと梓の背中に隠れる。おうう、髪ぐしゃぐしゃ…。ヘアゴムをとって、手櫛で梳かす。ぎゃあ、枝毛発見。もう面倒なのでポニーテールにしよう。

「ぬぬ、ポニテ満だ!」

「ポニテ満ですよ」

「僕は二つのがよかったなあ」

不満気に呟く梓。文句は私じゃなくて髪をぐしゃぐしゃにした翼に言ってください。

ピー、と集合の笛が聞こえた。行こうか、と促す梓に頷いて、召集場所に向かった。





















「サッカーとか…」

今日の体育はサッカーだった。そうか、だから合同授業だったのか。グラウンドでは梓たちがボールを追いかけて走り回っている。おーおー、頑張れうちのクラスの男子共。

私はグラウンド横の芝生にごろりと寝転んで、空を見上げた。本日も晴天なり。相変わらず空と空気が綺麗なところだ。

「ん?」

ふと視線を感じ、身を起こして振り向くと、綺麗な白髪の不良っぽい先輩(ベルトにつけているネクタイが赤だ)(ていうかなんでベルトに…)が、目を見開いて私を見ていた。先輩、そんなに見開いてたら目玉落としますよ。

「こんにちは」

「………!?」

どうせ暇だし、挨拶くらいしようと思って声を掛けると、先輩は少しびくり、と身を震わせてから「しゃべった…」と呟いた。この先輩私のこと馬鹿にしているのか。

「………」

「………」

「………」

「………」

やべえ沈黙怖い。どうしようどうしようと話題性の無さに不甲斐ないと思っていると、視界の端で何かが閃いた。これ、は、『星詠み』…!!

「先輩危ない!」

「!?」

咄嗟に立ち上がって先輩を庇うように抱き付くと、ドカッと頭に鈍痛。痛い。と同時に頭の中がぐらぐら揺れて、それで、

「――――!!」

誰かが私を呼んでいる。

それだけは理解できたが、あとはもう意識がブラックアウトしてしまった。







くたり、と力の抜けた一年生を抱える。だ、大丈夫かこいつ。もろにサッカーボール頭に食らってたぞ。

「―――満!」

グラウンドから、必死の形相で一年の男子がやってきた。俺の腕の中で意識を失っている女子を見て、さっと青ざめる。

「先輩、」

「あ、ああ…なんだ?」

「満、頼んでいいですか」

「……わかった」

満、というらしい女子生徒を背負うと、なるべく頭を揺らさないように俺は気持ち早足で保健室へと向かったのだった。











「梓!」

「…翼」

「満は!?」

「………僕の、せいだ」

「梓…」

木ノ瀬梓は、奥歯をギリと噛み締めて、悔しそうに、うつむいた。






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