vol.04



次の講座、星詠み科だけ三学年まとめてやるってさ、とクラスの男子に告げられて、なんてこったとアホみたいに口が開いたままになった。「口開いてるぞ」と注意されて早急に閉じる。

しかし三学年まとめて…か…。実をいうと異性の年上はあまり得意ではなかったりする。小さい頃、怖いお兄さんにぶつかって怒鳴られて以来苦手なのだ。同い年なら大丈夫なんだけど。

教室に行くと、見知らぬ先輩方がすでに席についていた。どうやら席は自由なようだ。クラスの男子も皆席についているため、変にあわててしまい、机に足をぶつけた。ぐらり、と体が傾く。

「え、あ、あぶな―――」

「おい、大丈夫か?」

転びそうになったところを、ぽすん、と抱き留められた。え、誰?と顔を上げると、

「あ、せ、生徒会長」

「ん?」

抱き留めてくれたのは、入学式で翼を生徒会会計に指名した生徒会長だった。そうか、この人星詠み科だったのか。

「あう、ありがとうございます」

「いいえー」

態勢を整えて、生徒会長に深々と頭を下げる。いやあ、助かった。顔を上げると、生徒会長はにっと笑って言う。

「俺、不知火一樹。お前は?」

「あ、日立満でしっ」

噛んだ。
不知火会長を見ると、口許を押さえて笑いを堪えている。ち、ちくしょう。笑わば笑え!

なんだか妙に恥ずかしくなって、まだ笑いを堪えている不知火会長にパンチをお見舞いしてから、適当に席についた。「いてっ」と笑いを含めた呟きが聞こえる。

「………あんた、一年生?」

ふと隣を見ると、アルビノの人がいた。ネクタイが赤だから二年生だ。先輩だ。
その先輩は、うつらうつらとしながら聞いてきた。

「あ、はい、星詠み科一年、日立満です」

「………そうか。俺は神楽坂四季。どう呼んでくれても…構わない…」

そういって睡眠に入っていった四季先輩(と呼ぶことにした)。先輩、まだ講座始まったばかりですよ。早いよ。

変わった先輩だなあ、でも綺麗な顔だなあ、とすよすよ眠る先輩を眺めていたら、突然前からにゅっと手が伸びてきて、でこピンされた。

「ぎゃあ!」

一斉に私に集まるたくさんの視線。そして、クスクスと笑われる。先生には「こら日立ー、静かにせんかー」と注意されて更に笑われた。誰だよ!と前の席を見ると、なんと前の席は不知火会長だった。少し前のめりになって、会長に小声で聞く。

(会長ですか!私にでこピンしたの!)

(さあ?)

会長はどこ吹く風で、右手でシャーペンをくるくると回してとぼけた。コノヤロー。あとで覚えてやがれ。




















「食らえ!ヘッドアタック!!」

講座が終わり、先生が出ていったと同時に不知火会長に頭突きをかました。突然の後ろからの攻撃に、机に前のめりに倒れる会長。ざまあ!

「先輩先輩、四季先輩!見ましたか今の鮮やかな私の頭突き!」

講座中は寝ていたのに、終わりと同時にのっそりと起きた先輩に振ると、先輩は寝ぼけているのか素の反応なのか曖昧に頷いてくれた。

「満〜〜〜!!」

「うびゃっ」

いつの間に復活したのか、不知火会長に再びでこピンされた。痛い。

「うええええ、四季せんぱーい」

がばり、と四季先輩に抱き付いてみる。先輩は、私の頭をよしよしと撫でながら呟いた。

「………いじめ、かっこわるい………」

「いじめじゃねーし!」

「ハッ!どうだか!」

「腹立つなお前!」

「……ていうかもう俺らしかいないぞ……」

はっと我に返ると、四季先輩の呟き通り、教室には私達三人しかいなかった。なんてこったい。

「じゃあ三人で飯行くか」

不知火会長の言葉に時計を確認すると、もうすでに昼過ぎだった。そういえばこの講座、四時間目だったのか。通りで腹が減ってるわけだ。

「そうですね、行きましょう」

「ん」

こうして星詠み科一年、二年、三年といった妙な珍妙なメンバーで昼食をとることになったのでした。






[*prev] home [next#]






BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -