vol.03



昔からどうも、お化け屋敷やら肝試しやらの類は苦手なのである。苦手だっつってんのに二人は私を連れて行こうとする。

「いやだ」

「嫌だって言われても」

「うん、思ったんだけどさ、私ここに残ってるからさ、翼と梓、二人で行ってきなさ」

「だめさ!」

「翼、合わせなくていいから」

なーんーでーよー!と叫ぶ。頑張って踏ん張ってはいるが所詮女子の力と男子の力の差は歴然である。
ずりずりずり、と引きずられながら前に進む私の体。あああやめてえ。

「ほらーたかが肝試しでしょ、満」

「たかが!?たかがって何よう!」

うあーん馬鹿ー!梓の馬鹿ー!そう喚いていると後ろから物音。ひええ!と悲鳴をあげながら思わず梓に抱き付いてしまった。だ、だだだだってこここ怖いじゃん!!

「あっ梓ずーるーい!」

「ふっ」

「ぬぬぬぬ…!」

なにしてたんだ君達。ていうかさ、人が怖がってるのにさ、心配の一つや二つくれてもいいと思うんだけどな。その前に元男子校がオリエンテーションに肝試しやるとか!意味分からん!あああ逃げたい超逃げたいいいいい。
自然と腕の力も強まる。

「ちょ、満、苦しい」

「うああああごめんなさいいいいい」

「強まってる!力強まってるよ!」

梓に抱き付いたまま腕の力を強めたので梓を締め付ける形となった。ちなみに反省はしているが後悔は一切していない。私の恐怖をお裾分け。














なんとか終わった。
猫が横切っては梓に抱き付いて(締め付けて)、風で葉音がしては翼の腕を引っ張った。
ただいまの私は意気消沈中なのです。一人部屋って楽ね。もう寝てしまおうか。そう思っていると、

ガチャンッ

「あれ、開いてる」

「うぎゃあ!ぱっつんのオバケ!」

「………………………満」

「ぬははは!」

「あ、あれ?翼と梓?」

突然ドアが開いたのにびっくりして腰を抜かした。よく見ると梓と翼だったので安心する。やれやれよかった。それより何しに来たんだろうか。

「私に何か用?」

「別に。それより満、鍵開けっ放しにしたらダメだろ」

「あ、そうだね。うっかりうっかり。鍵開けたままシャワー浴びちゃった」

「………………」

「………………」

「なんで黙るのよ」

大丈夫だっつーの!星詠みも役に立つんだぜ!不審者来たらそれぐらい(きっと)わかる(はず)!

「そのための星詠みじゃないでしょ」

「まぁそうなんですけど」

「ぬー…満の星詠みはどんな感じなんだ?」

翼が興味津津と言った感じに聞いてくる。隣の梓も聞きたそうだ。どうでもいいけど君達人の部屋で堂々と寝転がるなよ。

「どんなって…うーん、そうだなー」

何と言えばいいんだろうか。うーんと、えーっと。

「視界の隅にチラッと写る。そんな感じ?フラッシュバックみたいな」

「…よくわからん」

「仕方ないよ、僕らは元々見えないし」

「ぬぬ…」

説明下手でごめんね!私だってよくわからないってのに。…ところで、

「梓と翼は何しにきたんだっけ」

「それはだな!梓が満が心配だといっ「たまたま通り掛かったから声掛けただけだよ」

「あらなんだ、そうだったの」

「ぬーん…」

「ほら、翼。帰るよ」

「ぬぬぬん!また明日な!満!」

「はいはいおやすみー」

「おやすみ、満」

途端に静かになった部屋で、私は一息ついた。なんだかんだで友達ってのはいいものだね!素敵!















「バカ翼!なに余計なこと言おうとしてくれちゃってるのさ!」

「だーってー。でも紛れもない事実だし」

「〜〜〜っ…」

「だしょ?」

「もういい!とっとと戻って寝るよ!」

「ぬははっ梓顔真っ赤ー」

「うるさい!」






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