vol.23



今日は1日暇だった。
読みかけの本は全部読んじゃったし、今日やると決めた範囲の夏休みの課題は一応終わってるし、暇だからと始めた掃除も終わりかけている。さて次は何をやろうか。星を見るには時間がまだはやい。

「…街にでるか?」

お金はあまりないけど、部屋でうだうだしてるよりかはマシかな。

「ようしそうと決まれば着替え着替え―!」

実はまだパジャマだったのでした。



速攻でお気に入りのワンピースに着替えて寮を飛び出した。外は予想外に暑くて溶けそうだ。すぐに寮に戻りたくなる足をこらえて、私はバス停目指して歩みを進める。

「あつい…」

溶ける。そうだ、街についたらコンビニでアイスを買おう。ガリガリくんにしようかなー久しく食べてないしなー!なんて考えながら歩いていたら、突然視界が真っ黒になって、汗の臭いが嗅覚をついた。うわー何事!?

「てか汗臭い!臭い!」

ぶわー!なんじゃこりゃー!?と顔にはりついたものを剥がすと、そこには先ほど私の顔にはりつけたタオルを肩にかけてニヤニヤと嫌らしい顔を浮かべた前髪ぱっつんがいた。道着を着ているからこれから部活なのかそれとも終わったばかりなのか。
いやこれから部活ならタオルが汗臭いわけないか。

「部活終わったの?お疲れ様」

そう声をかけると、ぱっつんは虚をつかれたように目を丸くした。お前私が人を労わないとでも思ってんのかコンチクショウめ。

「…梓?」

「え?」

「どうしたの?なんでそんなびっくりしてるの」

「…え、あ、ああ、いや、べ、別に、なんでも、ない」

はは、と乾いた笑いを浮かべる梓に怪訝な顔を浮かべつつ、じゃあ私行くねと言うと、

「あ、待って満。これから誰かとでかけるの?」

嫌みかこいつ。一緒にでかけるような友達なんかまだいねーよ。嵩嗣ぐらいしかいねーよ。そんなあいつは今帰省中でここにいねーよ。くっそう、悔しくなんてないんだからね!

「いや、おひとり様ですけど」

「そう」

私の返答に梓は何故かほっとしたように肩をおろした。なぜ。

「じ、じゃあさ、僕も街に用があるから一緒に行くけどいいよね?」

「別にいいけど…」

「じゃ、決まりね。行こうか」

なんでこんな有無を言わせない返答なんだ。了承するしかないじゃないか。いや別にいいんだけどさ。というかそんなことより、

「……道着で行くの?」

「…………」

「…………」

「……着替えてくる…」

「うん…」

着替えてくるから!先行かないでよ!と言って射手座寮へと小走りで向かう梓を見送りながら、梓もうっかりすることがあるんだなあ、と思ったのでした。

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