vol.01




―――未来が見える。



これを、人は『星詠み』と呼ぶらしい。星好きなだけでただの一般市民である両親を持つ私には、これはよくわからん能力であった。未来が見えるなんて自分はどこかおかしいのではないか、と幼心に不安がり、母親にこの力のことを相談してみたら、母はあらあらと首を傾げて、

「歩きながら寝たらだめでしょ、満ちゃん」

誰が歩きながら寝るか。

母親は頼りにならねえ。ならば父親だ。そう思い、父親にも相談してみたが、彼は笑顔で、

「満、それはな、第六感だ!俺も昔幽体離脱とか宇宙交信を試してみたもんだよ!」

だっはっは、と笑う父親に絶句したのを覚えている。

とにもかくにも、『星詠み』なんて能力を一切知らない両親にのほほんと育てられた私は、私自身も『星詠み』なんて能力をイマイチ理解しないままこの星月学園に星座科で願書を出した。


私が『星詠み』の力を持っていると知ったのは、教師との面接のときであった。
何か特技はあるか?と聞かれ、特にありませんが未来がちらっと見えます、と答えたところ、その教師は目を剥いて携帯を開くとどこかに連絡をしていた。そしてすぐに、あなたは星座科ではありません、と告げられた。やばい、落ちた。あの両親なら「大丈夫よー」とか「なんとかなるなる」などとふざけたことを抜かすだろうが、そんなの私が許せない。どうしよう、どうすればいい?と顔を真っ青にさせると、それに気付いた教師が慌てて言ったのだった。



「あなたは星座科ではなく、星詠み科の生徒です」



…え、どゆこと。
















そんなこんなでやってきましたは星詠み科の教室、の前。説明によると、私と一個上の天文科の先輩二人だけがこの学園の女子生徒らしい。そういえば入試のとき、やけに男子多いなとか思ってたんだよね。

とりあえず、教室の前、にいる私。ドアを開けて、いざ、

「何してるの?」

「うぎゃあ!」

びびびびっくりした…!!振り向くと、そこにはぱっつん前髪で襟足の長い男子が、不思議そうに私を見ていた。彼の周辺にも男子は居るのだが、声を掛けてきたのは彼だけであった。

「あ、も、もしかして星詠み科?」

「僕?違うよ、僕は宇宙科」

「あー…」

そうですよね、星詠み科なわけないよね!星詠み科だったらもう教室入ってるはずだもんね!
がっくりと肩を落とすと、そのぱっつん男子はお節介にもいらぬ心配をしてくれた。

「教室、入れないの?だったら僕が開けてあげるよ、はい」

ガラリ、といとも容易く星詠み科の教室のドアを開け、はい開けたよ、と示すぱっつん男子。いいかぱっつん、女子には心の準備というものがいるんだよぱっつん。

なーんて、あくまでも親切に接してくれた彼にそんなこと言えるわけもなく。

「ウン…アリガトウ…」

消え入りそうな声で礼を言って(緊張のせいか片言になってしまった)、私は星詠み科の教室に足を踏み入れた。












「ぬ、梓?教室入らないのか?」

「今年、女子居たんだね」

「本当か?何科に入ったんだろうなー」

木ノ瀬梓はくすりと笑った。

「さあね?」






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