vol.17
満からメールがきた。なんでも、以前見知らぬ男子に告白されたとき、どう断ればいいのだろうと考えた末よりによって「好きな人がいる」と答えてしまったそうだ。それについて、どうしよう、どうすればいいかな?という内容だった。バッカじゃねーのと返信すると、
『仕方ないじゃん!前日に読んだ少女漫画でヒロインがそんな感じで断ってたんだから!』
って。アホかあいつ。 ヒロインは好きな人がいたからそう断っただけであって、好きな人がいない満はもっと別の断り方があったんじゃないか? …まあ満だからな。仕方ない。そもそもそれがどうしたというのか。断ったんだからハイ終わり、じゃないのか。
『協力してやるから好きな人を教えてくれって言ってきたの』
だと。なんだそりゃ。メンドーな奴に好かれたな、満。ハハッ、かわいそうに。せいぜい頑張れよ!と返信したら、
『梓と翼に迷惑かけちゃいけないと思って、崇嗣って言っちゃったんだよね』
…………は?
昼休み。梓は弓道部のミーティングで、翼は生徒会の集まりがあるというので昼飯は一緒に食べれないというメールにわかったと返信すると、私は幼馴染みのいる神話科を訪れた。
「いやあ、まさかこうなるとは思わなくてさー!ゴメン崇嗣!」
「…………」
ぱしんっ、と手を合わせて頭を下げると、崇嗣に無言で頭を押さえつけられた。
「ちょ、崇嗣さん?あんまり押さえつけると頭が沈んでしまうんですけど」
「…………」
「っちょおおお崇嗣さんマジで沈む沈む!!このままじゃ頭が床についてしまうよおああああ!!!!」
「チッ…しょうがねえなあ」
「あう」
あぶないあぶない。危うく床にファーストキスを奪われるところだった。ファーストキスが床とかロマンもクソもあったもんじゃない。勘弁してくれ崇嗣さん。
「んで?俺どうすればいいの」
「うーん、どうしよっか?とりあえずさ、彼がきたら話だけでも聞く振りしといてよ」
「りょーかい。乙女座定食、これ終わるまで奢れよ」
「わかってるって!」
こればっかりは崇嗣に感謝だ。いやーホント、持つべきものは友達だね!これが梓とか翼だったら引き受けてくれないだろう…な…、
「……?」
一瞬、脳の奥で何かが閃いた。言わずと知れた星詠み、だ。…でも何かおかしい。
「おい、満?どした?」
「…え?…あ……いや、なんでもない…」
彼が諦めてくれなかったらどうしようとか悩んでいるとでも思ったのか、崇嗣はニッと笑って私の頭をかき回した。
「大丈夫だって!んな心配そうな顔すんな。俺が適当に話聞いて相手してりゃーあいつもすぐ諦めるだろ」
「…えっ、あ、うん…」
…うーん、いや、それも気がかりっちゃ気がかりなんだけど。今は妙にこっちの方が気になるなあ。 今さっき星詠みで視た、少し先の未来。これはなんだ?どうしてなの?…ねえ、梓?
未来の君は、どうしてそんな傷ついた顔しているの?
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