vol.15
夏が来た。 それと同時に羊先輩がアメリカに行ってしまった(哉太先輩ほどじゃないけどめっちゃ泣いた)。そして梓はなんと弓道部に入部し、大会があるからと打ち込むようになった。翼は翼で生徒会会計の務めを果たすべく毎日不知火会長や青空先輩に連行されていた。 どこにも所属していない私は1人、取り残されたような気持ちになった。月子先輩みたいに部活か何かに入ったほうがいいのかしらと思う反面、部活には私の苦手な年上の男性がいっぱいいるじゃん、と思い当たって私は無所属という立ち位置から動けずにいた。
「調理部とかあったらいいのになあ」
屋上庭園のベンチに座って、広がる快晴とソフトクリームのような入道雲を眺めながら呟いた。当然返事は返ってくるまでもなく、私の呟きはぽつりと消えて行く。ああ寂しい。これはもう友達増やすしかないか!
「…ん?あれ?お前、満?」
「ほん?」
ベンチから立ち上がってどう友達を増やすか試行錯誤していると、聞き覚えのあるようなないような声に名前を呼ばれ、勢いよく振り向いて驚いた。
「あ、た、崇嗣…!?」
「お、お前…マジで満なんだな…」
なんということでしょう。炎天下の中友達増援計画を練っている最中によもや旧友に会えるなんて。ちなみに崇嗣と私は小学校が同じで、昔からよく遊んでた仲でした。中学入る前に日立家が引っ越してしまったから、それっきりだったんだけどまさかの再会!いやあ、嬉しいですなあ!
「そういえばよく星の話したね」
「だなー、ていうかまさかお前が星月学園受けるなんてな。何科なんだ?星座科?」
「うんにゃ、星詠み科」
「…………は?」
「だから、星詠み科」
「ま、マジで?」
「マジだよ」
もー、何をそんな驚いてるのさ!私、君に相談したことあったじゃんか!と言うと崇嗣は頭を抱えて考え出した。あっれ、そうだったか…?ハッ、もしかしたらそうだったかもしれない…!えっ、ていうかマジ?
「マジだって言ってんでしょうが」
バシッと一発肩にかますと、崇嗣はぎゃあと呻いて痛がった。少し半泣き。もう、相変わらず泣き虫なんだなあ。
「ところでお兄ちゃんとハルは元気?」
そういえばと思い当たって聞くと、崇嗣はその話題にぱっと目を輝かせて食いついた。こいつ本当ブラコ…いやなんでもない。
「おう!元気だぞ!満んとこの兄ちゃんたちも元気か?」
「元気すぎてウザいわ」
「お、おお…そうか…」
昔話に花を咲かせたところで、私の腹がぎゅるりと鳴った。そしてナイスなタイミングでお昼のチャイムがキーンコーンと鳴った。
「飯、一緒に食おうぜ」
「おうよ!」
どうやら無理矢理友達を作らずとも、なんとかやっていけそうだ。梓と翼が忙しかったら崇嗣にかまってもらおう。ああよかった。これで安心安心!
「なにやってんだよ満っ、早く飯食いにいくぞ!」
「ちょ、待ってよ崇嗣!」
ぎゅるりと再び喚く腹を押さえて、私は先を行く崇嗣のもとへと走った。
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