vol.12
夢を見た。
四季先輩が、一人でぽつんと歩いてるの。誰の輪にも入らず、ぽつんと一人で。
「先輩、四季先輩、」
どんなに呼んでも先輩は振り向かない、振り向いてくれない。先輩は一人でどんどん進んでいく。あれか、声量が足りないのか、と今度はありったけの力を込めて、叫んでみることにした。
「四季先輩!!」
「…………」
すると先輩の肩がぴくりと揺れて、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「先輩!」
思わず嬉しくなって駆け出そうとしたとき、何かにぐっと腕を掴まれる感触がした。
「し…不知火会長…?」
私の腕を掴んだのは不知火会長で、会長はとても悲しそうな顔で私を見ながら無言で首を左右に振った。まるでそっちに行ってはだめだ、とでも言うように。
「ど、どうして…」
ハッと気付いて前を向くと、再び四季先輩が歩き出してしまっていた。どうしてか、今は四季先輩の傍に行かなきゃいけないと思って、私は不知火会長の手を無理矢理振りほどいて、四季先輩の元に駆け出した。
そのときだ。
世界が暗転し、床が突然無くなって私は深く落ちてゆく。
不知火会長の私を呼ぶ声が、聞こえた、気がした。
「う…」
目を開ける。なんて心地の悪い夢を見たんだろう、とまだ覚醒していない脳内で先程の夢を反芻した。ああ気分は最悪だよ、と思いながら何気なく上を見ると、
「………おはよう、満」
色素の薄いサラサラの髪と、真っ赤な瞳が目に入った。……あれれ、そういえば私どうして四季先輩の膝の上で寝てるんだ?と自分が眠る前の状況を思い出してああそういえばと納得。
「あ、そか。四季先輩と寝ちゃったんだ」
「起きたら、あんたがいてびっくり」
「いやいや先輩が私を引きずり込んだんですからね?」
「…………抱き枕が、欲しくて…」
「生身の人間を抱き枕にしないでくださいよ」
よいしょ、と四季先輩の上からどいて、伸びをする。不自然な体勢で寝てたからか、パキポキと体中の骨が音をたてた。
「もう、夕方…」
先輩の言う通りもう夕方で、空は茜色に染まっていた。
「お腹空きました。先輩帰りましょうか」
「ん………」
ぐるりと鳴る空きっ腹を抑えて、足早に帰路についた。
それにしても、あの不思議な夢はなんだったんだろう。
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