vol.10



雨。
ざあざあと激しく降る雨に、私は落胆した。だってさ、星、見えないじゃん。
ここのところずっと雨続きで星を見ていない気がする。うう、久しぶりに満天の夜空が見たいもんだ。

――と、翼にこぼしたら、彼はぬはっと笑って、

「作ってやるよ!」

何を?と聞いたら、そりゃもちろん満天の夜空をさー!ぬはははは〜!と言って走って行ってしまった。相変わらず一人で賑やかな奴である。きっと翼の頭の中は太陽がさんさんとしていて、お花畑とか広がっているんだろうな。とかね、思ったりしてね。

………うん、だからまさか翼が本気で作ってくるなんて思いも寄らなかったわけだ。あの人本当に頭いいんだね。宇宙科首席の噂ってマジだったんだね。え、じゃあ梓が次席ってのもマジなの。

「………………私、君達と友達でいる自信無くなってきたよ…」

「は?」「ぬ?」

いつもの昼食中。(ちなみに最近は雨のため、生徒会室で昼食をとっている)突如翼がぬぬ〜ん!と言いながら例の満天夜空製造マシーンを発表したときにぽろりとこぼれた本音に、梓は顔をしかめて、翼はきょとんとした。

「なに、どしたの満?」

「どうしたもなにもさあ…!」

私はわっと顔を覆って、叫んだ。

「なんなの君達…!いとこそろって頭いいとか…!チクショーバカヤロー英語教えてくださああああい!」

二人と相対して、私は英語の小テストの追試に引っ掛かっていた。そうだよ英語苦手ですけどー!何か問題でもー!?

「満、逆ギレしないの」

「うええええ梓あああああ」

「だいじょぶだいじょぶ!俺と梓が教えるから、満は満点間違いなし!だ!」

「うええええ翼あああああ」

なんて善人なんだこの二人…!僻んでごめんなさい!首席と次席とかマジで?ウッソーとか思っててごめんなさい!






















そんなこんなで宇宙科の二人に放課後、小テストの勉強を教えてもらうことになった。(ちなみに満天夜空製造マシーンは私が追試で合格するまでお預けとなった。ちくしょう、言わなきゃよかったな)

ちなみに本日は翼が教えてくれる日…なのだが、

「え、ちょ、翼さん翼さん。ここどうして過去完了になるの」

「ぬぬ〜ん!ここがこーなってー、あーなってこーなるからだぞ!わかった?」

「………………なるほど、わからん」

「ぬぬ…満って…アホ?」

「アホとか言わないでよお!」

感想。
翼先生の教え方はわかりにくいです。あと傷つくことを純粋に言ってくるものだから私のガラスハートはブロークンです。粉々です。

そんでもって今日は梓先生の日です。うん、教えてもらうまえから恐怖を感じてますよ!見て私の肌。超鳥肌たってる。ざりざりしてる。

「はーい今日の授業をはじめまーす」

うああ、来たよ。

「そんな前置きいらないから!」

「じゃあまず助動詞からね」

「聞けよぱっつん」

「一問間違えるごとに一発でこピンね」

「なんでじゃあ!!」

私はこの日、一生分の体力と精神力を使って英語をやったかもしれない。










「1、2、3ー…なーんだ、全部丸だよ、満」

「……ぜぇ…はぁ…ぜぇ…そりゃ……よかっ…た……はぁ…」

精魂尽き果てた。尽き果てたよ。そりゃ全力でやったからね。だって梓のでこピン超痛いんだよ!無理無理耐えられない。

「はーいオメデトー」

ビシッ

「痛ああああああああああ!?」

何故かでこピンされた。な、な、な、なんでえ!?
じわじわ痛む額をおさえて、若干涙目のままキッと梓を睨みあげると、梓は何故か一瞬ひるんでそっぽを向いた。

「うにあああああああずさああああ!!」

「なに?」

「何じゃないよバカ!おまえ前髪引きちぎんぞ!!」

「ハッ…」

「〜〜〜〜ッバカーーーっ!!」

「ぐあっ」

鼻で笑われたのにムカついて、思わずヘッドアタック(頭突き)をして教室を飛び出した。なんか悶絶してる梓が視界の端に映ったような気がしないでもないけど知るものか!


あ、追試は満点でパスしました。








満が僕の腹に頭突きし逃亡をはかったのと入れ違うようにして翼が教室に入ってきた。痛みに悶絶している僕を見るなり絶句していた。

「あ〜ず〜さ〜」

「………………………なに」

「満いじめちゃだめだぞ」

「仕方ないじゃん、いじめたくなっちゃうんだから」

「んーまぁーわからなくもないんだけど〜」

ぬは、と笑って机の上に座る翼。だってお前、涙目で上目遣いされたらさあ…ねえ?
満が飛び出していったドアを見つめて、なんとなく笑みがうかんだ。






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