課題に追われていた。なんだってこの学校こんなに課題多いんでしょうか。誰か教えて偉い人。
部屋でやっても集中できないので、図書館でうだうだと課題を消化していたら、
「朝野さん?」
「金久保先輩!」
勉強教えてください!出会い頭にごめんなさい、でもピンチなの。
金久保先輩は笑顔で了承して下さった。マジ神だろあの人。
「どこがわからないの?」
「あ、えーっと、こことここと…」
向かいの席に座って、私の課題を覗き込む金久保先輩。色素の薄い髪が陽の光で透かされてきらきらと輝いて見える。
「朝野さん?」
「へっ、」
どうやらぼーっとしていたらしい。金久保先輩が心配したように私の顔を覗き込む。
「大丈夫?具合悪い?」
「あ、ああ、大丈夫です。悪いのは頭だけです」
「…そんな卑下しなくても…」
事実だからよいのです。
「金久保先輩、続き教えてください」
「…あ、そうだね。えーっと、そう、ここはね…」
金久保先輩が懇切丁寧に教えてくれたおかげで、無駄に量の多い課題を無事終えることができた。
「うああ、ありがとうございます金久保先輩!」
「いえいえ、お役に立てて光栄です」
「金久保先輩好きだ!」
「……っ!」
あ、間違ってラリアットかましちゃった。
「ごめんなさい金久保先輩」
「だ、大丈夫だよ…朝野さん、力強いね」
「ええ、まあ」
鉄骨ぐらいは持てる気がする。…んなわけない。とりあえず金久保先輩の首を擦っといた。この人首細いなー。
「あ、そういえば金久保先輩、先輩のお勧めの本ってありませんか?最近読みたい本がなくて」
「僕のでいいなら…」
かなりの量の本を紹介してくれました。
気付いたら外はオレンジ色だった。図書館の閉館時間ギリギリまで居た私達は、半ば追い出されるように図書館を出た。
「先輩…こんなにあるとは思いませんでしたよ…」
「僕もだよ」
あはは、と朗らかに笑う先輩。そんな先輩の両手には私が借りた先輩のお勧め本たちの入った紙袋。金久保先輩は勉強を教えてくれた上にお勧めの本まで紹介してくれて、尚且つ寮まで送るのに持ってくれるというのだ。なにこの紳士。超かっこいい。
「金久保先輩ってかっこいいですね」
「………僕が?」
「ええ」
だって紳士ってそんなに居ないぜ…。近い所で錫也かな、と思っていると金久保先輩が急に歩みを止めた。うっかり先に歩いてしまった私は急遽立ち止まる。
「金久保先輩?」
「朝野さん…」
「?はい」
どうしたんだろうか。金久保先輩は急に真剣な顔で私を見つめる。なんだか若干照れる。
「あ、…その、咲月ちゃんって呼んでもいいかな?」
「いいですよー」
「早いな。ありがとう」
照れて頭を掻く金久保先輩。この先輩かっこいいだけじゃなく可愛いも持ち合わせているぞ…!!強い。
「じゃあ誉先輩って呼んでもいいですか?」
「もちろんだよ」
超笑顔の金久保先輩…もとい誉先輩。背景の夕陽がいい具合に輝いて、先輩の笑顔も輝いて見えた…なんてね。
誉先輩は寮の玄関先まで送ってくれた。紳士紳士、リアル紳士。
「じゃあ」と言って先輩は自分の寮に帰っていきました。なんか後ろ姿もかっこよく見える。
誉先輩のお勧め本の入った紙袋を胸に抱えて、早速読もうと私は自室に駆けこんだ。
自分の寮に帰る途中で、金久保誉は思わず小さくガッツポーズを決めた。どうしたって口元がニヤけてしまうのを抑えて、彼は寮へと帰宅した。
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