「……夢じゃなかった…」

昨晩、食堂から帰宅すると見慣れた私物が入った段ボールが積み上げてありました。それを確認した私は、制服が皺になるのも厭わず、ふらふらとベッドに倒れこんでしまったのでした。

そして、朝を迎えた今に至ります。

「…………」

段ボールの山を眺めて、溜め息を吐く。とりあえずこれらを片さねばなりません。

「えーと、これは」

あ。
いきなり同人誌の詰まった段ボールを開けてしまいました。……というかこの肌色含有率の高い同人誌、誰が詰めたんでしょう。母?…………まあ深く考えないでおきましょう…。

「どうしましょう」

この同人誌。とりあえずカバーがかかっているBL本を上に重ねておきましょうかね。これならパッと見、本にしか見えませんし。

「…とりあえず着替えますか」

皺になっている制服を見つめて、私は洋服が入ってる段ボールを探すことにしました。えーと、これでもないしあれでもない…あ、あったあった、ありました。早速着替えますか。

面倒だから一気に脱いで一気に着替えてしまおう、と思って下着姿になった瞬間、

「おーい、居るか?入るぞー」

「えっ」

なんと、男性が私の部屋に入ってきてしまいました。あら、この特徴的な前髪は…。

「あっ、わ、悪い!すまん!ごめんなさい!」

「…………」

星月学園生徒会長であるなかむ…じゃなくて不知火一樹でした。ああ、そういえば昨日琥春さんが生徒会長がなんたらかんたら言っていたような。忘れてた。

「お待たせしました」

私はのんびり着替えると、ドアを開けて不知火一樹を迎え入れました。

「あ、ああ、そ、その、さっきは…」

「ああ、大丈夫ですのでお気になさらず」

「そ、そうか…(変わったやつだな…)」

「何か御用ですか?」

「ああ、この学園を案内してやろうと思ってな。今、大丈夫か?」

「ええ」

大丈夫です、と答えると、不知火一樹は大きく頷いた。そして、ふと何かを思い出したように顔をあげて、

「言い忘れてた。俺の名前は不知火一樹!この星月学園の生徒会長だ!」

「雲居常葉です。よろしくお願いします、一樹くん」

「おう」

では、行きましょうか、と一樹くんを促すと、一樹くんは「お前、上着とかないのか?」と聞いてきました。

「上着?」

「外、寒いぞ。今にも雪が降りそうだ」

「あら」

うーん…めんどくさいけれど、段ボールの波を掻き分けるしかないようですね。

「一樹くん」

「ん?」

「すみませんが、上着見つけるの手伝ってくれませんか」

「おー」

仕方ないな、と一樹くんは笑う。
……あ、どれが同人誌入ってる段ボールか識別してません。

「まあいいか…?」

「うわああああああなんじゃこりゃ!?」

「あ」

よくありませんでした。





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