突然肩を叩かれ、心臓が飛び上がるかと思うくらい驚いた私は、恐る恐る後ろを振り返りました。そこには、

「こんにちは、あなた、雲居常葉さんね?」

翡翠色の綺麗な髪を持つ巨乳美女がいました。彼女に名前を言い当てられた私は、しばし瞠目してしまいました。胸でけえ。

「あら?おーい?」

「あ、はい、雲居常葉です」

答えると、巨乳美女は満足げに頷いて「じゃあ、行きましょうか」と微笑んだ。
その微笑みに魅了され、思わず「はい!」と答える私。…………。

どこに?











車中でお名前を伺うと、巨乳美女は星月琥春さんという方でした。私がかつてプレイしてきた乙女ゲームの中に出てきたキャラクターと同じ名前です。そういえばビジュアルもそっくりです。なんですかここはコスイベですか一眼レフ忘れた。

連れてこられた先は、何やらデジャヴを感じるガラス張りの綺麗な建物、の最奥。理事長室、と書かれてありました。ソファーがふかふかです。気持ちいいです。

「さて、常葉ちゃん」

「はい?」

神妙な面持ちの琥春さんにぱっと向き直る。

「御両親、急な転勤で大変だったわね」

「え?そうなんですか」

「あら、聞いてないの?」

「ええ」

初耳だわ。今朝普通にトースト食べながら一緒におはよう日本みたんですけど。お昼とかに決まったんでしょうか。急な転勤だし。

「で、常葉ちゃんを任されたわけなんだけど」

「すみません琥春さん」

「いいのよ」

頭を下げると、琥春さんは柔らかく微笑んでくれました。しっかしこの人コスプレ完璧だなあ。早く名刺くれませんか。

「そういうわけだから、常葉ちゃんはこの星月学園に入学してもらうから、よろしくね」

「え?」

……今、なんと?

「せいげつ、がくえん?」

ってのは、あの、彼の有名な乙女ゲームの学校の名前ですか?
そう言おうとしましたが、私の口からは彼の有名な、で止まってしまいました。

「あら、」

琥春さんは私の言葉に「意外と有名なのね」と笑う。
え、そりゃ、有名でしょう!あんな豪華な声優陣揃えといて無名などと……謙虚すぎます。

「制服はちゃんと用意してあるから、安心してね。あ、部屋は職員棟の○○号室。荷物はもう運んであるわ」

「え、あ、はあ」

「終業式は昨日だったから、うちはもう春休みなの。案内とかは明日、生徒会長がやってくれるはずだから大丈夫よ」

「…………」

「私からは以上ね。何か、質問はあるかしら?」

「ああ、あの」

「ん?」

「ここのコスイベ会場の名前、なんて言うんですか?」





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