思い立ったが吉日って言葉は気まぐれのためにあるような言葉だなあと思う。 「ね、一樹くん」 「ああ、本当にな」 げっそりとした顔の一樹くん。どうしたんですか、もう歳なのですか。と鼻で笑えば誰のせいだと思ってんだ!と怒鳴られました。ああうるさいうるさい。 「なんですかもう、そんな怒らないでください」 「別に怒っちゃいねえよ!だがな!急に行動を起こすのやめろ!」 「バケツプリンの何が悪いんですか!」 目の前にありますは大きな大きなバケツプリン。 急にプリンが食べたくなったので食堂を借りて作ってみました。 ただプリンの容器がちょうど洗浄中だったのでそこらへんにあった寸胴を使ってみたんですよ。卵何個使ったかわかりません。 「あのさ、なんでこんな作った?」 「そこに寸胴があったから」 一樹くんの目の前には三つの寸胴プリン。私の目の前には八つの寸胴プリン。合わせて十一。 どうしてこんなに寸胴プリンがあるのかといいますとですね、まあ率直に言えば全部私が作ったから私のせいなんですけど。 ほら、人間って成功するとまたその成功を繰り返したくなるじゃないですか、ねえ? そういうわけで一個目の寸胴プリンが成功したのを見届けた私は調子に乗って何個も寸胴プリンを生み出してしまったのでした。正直食堂のおばちゃんたちにも引かれた。そんなに作ってましたのね。気付かなかった。 「あーおいしー」 「もっと美味しそうに食べてくださいよ」 「もう何個食ってると思ってんだよ」 「知りませんよ!」 「逆ギレすんな」 機械的にスプーンを動かす一樹くんを見ながら、私はとりあえず星月学園にいる知り合い全員にプリン救済のメールを送る。 「安心してください、援軍を呼びました。これで解決しますよ」 「……………」 「どうしたんですか」 「…今月子と桜士郎からメールが来たんだが」 「なんです?」 錫也が大量のおにぎり、誉が実家で発注ミスした大量の和菓子があるらしい。 「………今日はいったい何なんですかね」 「仏滅だ…」 「そうじゃないでしょう」 自分たちを囲む大量のプリンを見渡しながら、私たちは同時にため息を吐いたのでした。 |