妙に目立つ後輩の後ろをぼんやりとついてっていると、梓くんが申し訳なさそうな顔をして「付き合わせてしまってすみません、先輩」と言った。いいえ構いませんよ、あなたたちの絡みを見るためについてきたのですから。だからさあ絡め!色々な意味でな!―――なんて思いを腹にしまい、私は梓くんに向かって最初のひとことだけ言っておきました。

「先輩は何科なんですか?」

「私は西洋占星術科ですね」

今年から編入だからなーんもわかりませんけどね。黒歴史時代にタロットいじった程度です。

「お2人は確か宇宙科でしたっけ」

「えっ、なんでそれを…」

「……………」

しまった。すっかり話した気でいたけど話していなかったか。参ったなどう誤魔化そうかな。
ものすごく不審な目で見てくる梓くんにゴホンと咳払いすると、

「…世の中には知ってはいけないものがあるのです、梓くん」

もっといい言い訳なかったのか私。
まあ言っちまったもんは仕方ない。チラと梓くんの反応を窺うと、彼は少し腑に落ちないような顔をしていたがまあいいかと言った感じに溜息を吐いた。ふうあぶねえあぶねえ、これでなんとか大丈夫ですね。

「常葉ー!梓ー!行き止まりー!」

目の前をアラレちゃん走りしていた翼くんが急に立ち止まって、関係者以外立ち入り禁止と書かれたドアを指さす。そこは確かボイラー室だった気がする。

「ならもう帰ろうよ」

「えー!まだ全然探検してないぞ」

「明日もあるし、今日はもういいじゃん」

「ぬー…」

「そうですよ、翼くん。そんなに焦らなくても学校は逃げませんよ」

「ぬぬぅ…」

「逃げたら困りますけどね」

「うるさいですよ梓くん」

揚げ足をとった梓くんを軽く小突くと、私は踵を返して足早に去ることにした。

「すみませんが私はこれで失礼します」

「え〜〜〜常葉〜〜〜!」

「コラ翼、先輩も忙しいんだから仕方ないだろ」

「ぬー…」

「では」

トイレ行きたいだけなんですが、これ以上一緒にいるとちょっと面倒…じゃなくて女子トイレの前で待たせるのもあれですし、これでいいのです。

「(いかん、漏れる)」




「なんかミステリアスな先輩だなあ」

「面白いから俺は好きだぞ」





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