「寒い」

春休みだというのにこの寒さ。さすが山奥です。毛布が手放せません。あー暖かい!ぬくぬく!

「…………」

しかし、最近引きこもりすぎて体の重さが心なしか増えた気がします。ここ数日食うか寝るか原稿するか妄想するかだったからですかね。

「散歩するか…」

というわけで散歩です。せっかくなので一眼レフを持っていきたいところですが、重いのでやめます。代わりにデジカメ片手に学園内を徘徊です。













「おお、猫」

ちょっと歩いただけですぐ生き物に遭遇しました。猫といえば…猫をダシにして月子ちゃんと仲良くなるルートがある遊佐…じゃなくて水嶋が真っ先に思い浮かびます。

「にゃーん」

「気持ちいいですか?」

「にゃあ」

「そうですか」

まだうっすらと雪が積もっている草のうえで、仰向けになる猫のお腹を撫でながら、私は空いている方の手でシャッターを切った。

「君は人懐っこいですねー」

「にゃー」

「寒くないんですか」

「にゃーん」

「私は寒いです」

「……お前、なにしてんだ?」

「猫がしゃべった!?しかもどことなく杉田っぽい!」

なんとまあ!と驚いて猫を見つめていたら、「んなわけねーだろ」という声と共に後ろから小突かれました。なんですか誰ですか。

「おや、七海くん」

「……どうも」

後ろから小突いてきたのは七海くんでした。相変わらずいい杉田ボイスです。

「どうしたんですかこのクッソ寒いなか」

「その言葉、そっくりそのままお前に返すよ…」

「私ですか?私は散歩です。来たばっかりなんで色々じっくり見とこうと思って」

「ふーん…」

七海くんは興味なさげに呟いたあと、私のデジカメに気付いて、

「お前も写真、好きなのか?」

「ええ、まあ好きっちゃ好きですね。その時(のコスプレ)をしっかり保存できますし」

「おっ、だよな!その時(の思い出)をしっかり保存できていいよな!」

七海くんは私の言葉をいたく気に入ってくれたようで、そのあとも色々なカメラ談義をしました。いやあいい杉田ボイスでした。

「お前意外と話せるな」

「そうですか?光栄ですね」

ありがとうございます、と言うと七海くんは照れくさそうに「な、なんで礼言うんだよ!」と笑った。いい杉田ボイスです。耳が死にそう。

「さて、そろそろ帰りますかね」

帰って原稿を描かねばなりませんし、と心の中で呟いて、帰りましょうか七海くん、と言うと彼は素直に頷いた。おや可愛い。月子ちゃんにもこれくらい素直になればいいのに。

「な、なんだよ?」

「いえ、なんでもないです」

いかんいかん、思わずじっと見つめてしまっていた。早急に前を向くと、向かいから誰かが手を振っていました。ん?あれは…、

「常葉先輩!哉太!」

「月子ちゃんに東月くんでしたか。こんにちは」

「こんにちは、雲居先輩」

「どうしたんだよお前ら。どっか行くのか?」

七海くんの質問に2人はきょとんとしたあと、同時に吹き出した。なんだなんだと慌てる七海くん。2人はひとしきり笑ったあと、「もう夕飯の時間だから、食堂に行くところだったんだよ」と説明してくれました。

「もうそんな時間でしたか」

「そうだったのかー、全然気付かなかった」

「雲居先輩も、夕飯一緒にどうですか?」

「おや、いいんですか?」

「もちろん!」

ありがとうございます、と私が東月くんに礼を言っている後ろで、月子ちゃんが七海くんに何か詰め寄ってました。

「哉太と常葉先輩で何話してたの?」

「なんでもいいだろ!お前にゃカンケーねーよ!」

「えー!何それー!」

仲良きことは美しきかな、ですね。まあ私は男女間の友情は信じてませんが。

あ、男同士の恋愛なら超好みですよ。







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