流星ソルジャー
銃を持つ手が重い。
私には重すぎるのだ。やっぱり梓が言ってたほうにすればよかったかな、という思いと同時に「ほら、やっぱりね。僕がいった通りでしょう?」とどや顔をしてくる梓が脳裏に浮かんで、私は舌打ちをした。
(梓のくそったれ!!)
いつもは湯水のように沸き上がる星詠みも、今回は何故か浮かんでこない。どうしてだろう。何か、あるのかしら。
(っと、いけない…集中集中…)
銃の重さに負けないように、気力をしっかり保って、撃つ。しっかり狙いを定めて、3、2、1。
パァンッ!!
やった、当たった!
喜びもつかの間、緩む頬をきゅっと引き締めて、無線で合図を送る。
「こちらElektra、ターゲット狙撃完了しました!」
『こちらAries。お疲れさん、あとは俺たちに任せろ』
ぶつり、と無線が切れたあと、遠方で銃撃戦開始の合図が轟いた。よしよし、ボスの作戦通り!
ふう、と今までの緊張と共に、息を吐き出した。今日の私の仕事はこれでおしまい。ターゲットである囮を狙撃するだけでいい、だなんて不知火先輩たちも私のこと甘く見すぎてるんじゃないかな!
まあ、いいや。任務は完了したしひとまず撤退しよう、と銃をフェイクの入れ物にしまっているとき、無線が鳴った。あれっ銃撃戦もう終わったのかな?でもまだ発砲音聞こえるんだけど…、と思いながら無線に出る。
「はい、こちらEle…」
『お前、あのZodiacの女だろ?』
「は、え、だれ…」
『悪いけどさ、死んでくれる?』
「えっ…………」
て、敵だ!そうか、あの囮は最初から捨てゴマだったのか。な、なんてこった…!
まずい。狙われている。
まさか裏をかかれるとは思わなかった。やばい。これはやばい、どうしよう、どうしよう、どうしよう。
『じゃあな嬢ちゃん、サヨナラ……ぐあっ!!?』
チュイン!!
「ひっ!?」
死に際が見知らぬオッサンの声で終わるなんて最悪だな、と思ったとき、無線の向こうで何かが起きた。そのせいで狙いがずれたらしい。敵の弾は私の頭ではなく頭より2ミリ上を撃ち抜いた。あ、ああああっぶねー!!ちょっと何すんのよオッサン!!
「ていうか何が起きたの…?」
オッサンどうした?と思わず呟くと、無線から『お前バカだろ』と聞き慣れた声が。
「あれ、オッサン若返ったね」
『満殺すよ?』
「やめて!!今臨死体験したばっかりなんだから!!!」
『なんだ、よくわかってるじゃん』
あはは、と朗らかに笑うのはぱっつんのあいつだ。
「よく間に合ったね」
確かエスターテは遠征から帰還次第この作戦に参加するって聞いてたんだけど。そう言うと、梓は無線の向こうで笑った。
『当たり前じゃん、僕を誰だと思ってるの、満?』
はいはいさすが負けなしルーキーですね。
流星ソルジャー
『ところで満』
「ん?」
『その銃、重くて後悔しただろ?』
「っし、してないよ!!!」
『(後悔したんだ…)』
◎梓は走ってきました