Show Time!!





持ち主を亡くした館は、いつも私を悲しくさせた。もう長年放置されたせいであちらこちらに埃をかぶり、壁は傷んでシャンデリアはぼろぼろだ。

「もったいないなあ」

洋館なんて、そう簡単に住めるものでもないのに。そう呟いて、薄暗い屋敷内を手元のペンライトで照らす。今日の任務はこの廃屋にあるお宝捜索なのだが、どの部屋に隠されているなどは暗号には書いてなかったらしく、私達は手分けしてボロ館の部屋をひとつひとつ見回っていた。

「……まあ、これじゃあ誰も住もうとは思わないか」

歩くたびに軋む床を睨み付けながらとある一室のドアを開けると、天井からぶらりと垂れ下がる、輪を成した縄と、その足下に転がる、欠けた白骨死体を見つけた。

「ありましたか、Alcyone?………ああ、」

固まっている私を見て、後ろからやってきた颯斗くんが部屋の中の光景を見て絶句した。それから、黙祷。

「ここの家主かな」

「みたいですね。惜しいな、生きていたら聞き出せたのに」

若干悔しそうな颯斗くんに「何を?」と聞きかけて口を閉じた。宝石、か。生きてたとしても口を割らないだろうと思ったけれど、言わないでおいた。部屋の真ん中でその存在を主張するかのように、宙ぶらりんになっている縄を無言で調べている颯斗くんを見て、なんとなくどうでもよくなった。

「では、次の部屋に行きましょうか」

「そうだね」

颯斗くんに促されるようにして、私は白骨死体の部屋を後にした。

















奥へ奥へと進んでいくと、やがてホールに行き着いた。隅にはお決まりというかなんというか、真っ白で綺麗なピアノが鎮座している。

「これで、最後ですかね」

「そうみたい」

羊にもらった洋館の地図を広げて、確認する。ほとんどに赤い×印がついていて、唯一ついてないのがこの大ホールだけだった。
とりあえず各自、この大ホールを手分けして捜索開始。あるかなあ、あるといいなあ。












「…………ないな」

お宝はそう簡単には見つからなかった。もしかしたら隠し部屋とかがあるかもしれない。カーペットの裏とか?そう思って重くて埃っぽいカーペットをめくってみる。……なかった。

「本棚とかあったらなー…」

どこかの本を押すか引くかしたら秘密の扉が出現!ってなるのに。定番だけど、その方が手っ取り早い気がするんだよね!

「……………」

しかし残念なことに、このホールにはなかった。ちなみに他の部屋にはたくさんの本棚があったので、一冊ずつ押したり引いたりしてみたが何も起きなかった。
しかし何もないホールである。色んな所を探ってみても何もないとなると、残されているのは、

「あのピアノだけか」

私の位置とは正反対の場所にあるグランドピアノを見た。ピアノは今、颯斗くんが調べようとしている。

ホールに取り付けられた真っ白で綺麗なピアノは、大窓から差し込んでくる月明かりによって、よりいっそうその蒼白さを浮き彫りにしていた。

「…………ん?」

待て待て、なにかおかしくない?

「……『真っ白で綺麗な』?」

おかしい。この洋館はぼろぼろで痛んでいて、白骨死体だってあるのに、なんでピアノだけ綺麗なままなの?……明らかにおかしい。だとしたら、あのピアノには何か仕掛けられている確率が高い、気がする。

「Virgo待って、ピアノまだ調べないで!!!」

「え?」

遅かった。

颯斗くんがポーン、とキーを叩いた途端、大きな音をたててグランドピアノが爆発した。

「Virgo…!!」

「ぐっ……」

爆発はホール全体に行き渡って、ガシャンパリンと窓ガラスやら燭台やらが割れる音がした。私の視界は煙のせいで真っ暗で、何も見えない。ちくしょう、颯斗くんの安否を確認したいというのに!

「Virgo!」

名前を呼ぶ。が、黒煙の中から返ってきたのは、返事ではなくナイフだった。

「!?」

咄嗟に苦無を投擲して、威力を相殺する。続いて降ってくるナイフも同じように相殺した。

「…………」

なんだろう、私この戦い方知ってるな。確か私がまだFMSに所属している頃に一回だけ手合わせしたことがあるようなないような。…うーん、試しに小型チャクラムでもぶん投げてみよう。えい。

「どわあっ!!?ちゃ、チャクラム!!?」

「…………」

…なんだろうこの聞き覚えのある男の声は…。
次第に煙が晴れてきて、うすぼんやりと相手の影が見えてきた頃、私は敵対する相手を確信した。面白いからこのまま攻撃しよう。うりゃっ、手裏剣!

「うわああああ手裏剣!!?いって、若干刺さった!」

あれ、刺しちゃった。うっかりうっかり。

「俺だって負けん!」

そう言って、相手は負けじとナイフを投げてきたがワルサーで全部撃ち落とした。そして地面を蹴って、一気に間合いを詰める。

「ハァイ、Rigel」

「!!?」

相手、というより元仲間の弥彦くんのこめかみにワルサーを突きつけて挨拶。弥彦くんはどうやら今の今まで敵対している相手が私だとわからなかったらしく、目を白黒させて私を見ている。

「あっ…Alcyone!!?おま、なんでここに…」

「随分楽しい喜劇の舞台を用意してくれたみたいね」

どうもありがとよ、と笑って引き金を下ろす。ひぃっ、と引きつる弥彦くんの顔。

「お、おいAlcyone……ま、まままままさか、おおおお前に限って裏切るとかそんなバカな、」

「バーンッ!!!」

「ぎゃあああああああああ!!!」

弥彦くんは気絶した。……相変わらずだなこいつ。真っ直ぐ故に単純。いつか敵側に漬け込まれかねない、と琥春さんは嘆いていたが、FMSに月子ちゃんが居る限り彼は寝返ることはないと思う。

下ろした引き金を元に戻してホルスターにしまうと、気絶した弥彦くんをずるずると引きずって邪魔にならないところに放置した。さてさて、あちらさんはどうなっているのやら。

黒煙の薄れた大ホールの中心で、踊るように戦う2人を見やった。ピンクと緑のコントラストが鮮やかで、とても綺麗に見える。

「さてさて、お手並み拝見」

金属音がぶつかり合う音をBGMに、私は被害の及ばぬところへと移動した。


















Show Time!!
(さあはじまるよ)

















◎うっかり続きます





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