アルタイルの微笑





待ちに待ったオフの日をどう過ごすか考えている内に寝落ちして朝になっていたときのあの虚しさといったらない。「やっちまったぜ…」と1人ごちて再び眠りについて目覚めたときの虚しさといったらない。

「…………11時……」

二度寝から目覚めたにしてはまだマシな時間かもしれない。だってあと13時間残ってるんでしょう?

とりあえずいつものスーツではなく、カジュアルな服に着替え、財布と携帯を適当なカバンに突っ込んでアジトを出た。
















「あら、咲月ちゃん?」

「環さん!久しぶりですね」

街をウロウロしていたら、街道でばったりと環さんに出くわした。彼女はFMSでもやり手の殺し屋で、明るい性格とは裏腹に結構残虐な方法を使っちゃったりする人だ。

「咲月ちゃん、今暇?」

「はい」

「今からかなちゃんとしーちゃんを迎えに行くんだけど、一緒に行く?」

「行きます!!!」

行かないわけがない。













環さんの妹たちである奏ちゃんと詩ちゃんは、有名な子役女優だ。もう本当可愛い。環さんが溺愛する理由もわかる。奏ちゃんと詩ちゃんは本当可愛い。収録スタジオから出てきた2人を見るなり、私は駆け寄った。

「奏ちゃん、詩ちゃん!!」

「「……咲月ちゃん!?」」

久しぶりの再会にがばりと抱き合う。詩ちゃんがキラキラとした眼差しをしながら、私の腕を引っ張った。

「咲月ちゃん、ここに居るってことは、もうあの任務は終わったのね!?」

「え、あ、いや、」

「じゃあまた、皆でおしゃべりできるんですね!」

「や、えと、あの、」

きゃあ、と言ってはしゃぐ双子に私は何も言えなくなった。ああー、ええっと。

「こーら、しーちゃん、かなちゃん、咲月ちゃんはまだお仕事中なのよ」

どう説明しようか困っていたら、あとからのんびりとやって来た環さんが説明してくれた。その言葉に頬を膨らませる詩ちゃん。

「ええーっ!咲月ちゃあん!」

「ごめんね詩ちゃん…」

「奏、早く咲月ちゃんといっぱいおしゃべりしたいです…」

「うううごめんね奏ちゃん…」

「私も、早く皆でお茶がしたいわ」

「うああごめんなさい環さん…!!」

私もお茶したいです!と環さんの(豊満な)胸に飛び込むと、環さんは笑って受け止めてくれた。

「さあしーちゃん、かなちゃん、咲月ちゃんにせっかく会ったことだし、今日のところは4人でお茶して帰りましょう?」

「はい!」

「さっすがあーちゃん!わかってるう!」

ほら、咲月ちゃんも行きましょう?と言って微笑む環さんに頷いて、歩き出そうとした、とき。

「でもその前に、」

「え?」

ヒュッ、とナイフが投げられる音がした。直後、そう遠くない距離で聞こえる男のうめき声。

「…………えっ、」

「だめよ、咲月ちゃん。あんな妙な男に尾行されちゃ」

振り返ると、小型ナイフを片手に、環さんが可愛くウィンク。

「あ、えっ、私尾行されてた?」

わお…全然気付かなかった…と言うと、詩ちゃんと奏ちゃんも驚いたように目を見開いて、

「あたし達も気付かなかったよー!」

「環ちゃん、すごいです」

妹たちの言葉に、環さんはえっへんとおどけたように胸をはるが、すぐに鋭い目になって、再び尾行男の腕目掛けてナイフを投げた。

「うっ…あ……」

「私たちを尾行するなんて、いい度胸ね」

コツコツと靴音を響かせて、男に近付く。

「言ってご覧なさい、誰に、雇われたのかしら?」

「…う、そ、それはッ…!」

し、知らない、知らないんだ…!と歯を食い縛る男に、環さんは一言そう、と頷いた。そして懐からナイフを取り出すと、

「なら、死になさい」

ニッコリ笑って男の喉笛を切り裂いた。

















「じゃあ、私はこれで」

「またね、咲月ちゃん」

「咲月ちゃんまたね!」

「今日は楽しかったですー」

4人でお茶をして、適当な時間に解散。環さん、奏ちゃん、詩ちゃんに別れを告げて、私は私が今、在るべき場所へ帰ることにした。















咲月の背中が見えなくなったと同時に、環は携帯を開いた。数秒のコール音のあとにがチャ、と受話器を取る音がする。

「ああもしもし、Canopusですか?作戦は順調です。Alcyoneは上手くやっています」

奏と詩は顔を見合わせてニッと笑う。環も微笑んで、

「全ては作戦通りです。ええ、万一裏切った場合も考えてありますから」

では、と言って携帯を閉じて、環は妹たちに帰りましょう、と促す。2人が頷いて環に背を向けたとき、環は楽しそうに笑った。


















アルタイルの微































◎金久保姉妹愛してる





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