妖精のいる学園





天文科でのおしゃべりをひとしきり楽しんだあと、神話科の教室に戻ると、翡翠の作家が1人、私に背を向けて夕日の射す教室に残っていた。

「琥雅」

「…………」

反応なし、返事なし。
この咲月様を無視なんていい度胸じゃないか、と彼の前に回り込むと、なんと彼は座ったまま寝転けていた。ああ、こいつやっぱり星月先生の弟だわ。そっくり。

「…………」

…本当に、綺麗だな。
琥雪も綺麗だけど、琥雅はまた別の美しさを持っている気がする。
なんていうか、その、琥雪が水の妖精だとしたら琥雅は新緑の妖精、みたいな…。……いや違うな、なんだ?……言葉が全然思い付かん。ああ恨めしや、私のボキャブラリー。

「うわ、ぶっさいく」

「ああ!?」

突然耳に入った罵声と声を掛けられたのに驚いて、女の子らしからぬ声をあげてしまった。

「咲月、さっきから何してんの」

欠伸をかきながら髪をかきむしる琥雅。こいついつの間に起きたんだ。全然気付かなかったぞ。

「…別に」

琥雅に見とれてましたなどと言えたものではないので、足早に琥雅のもとを離れて、私は自分の席に荷物を取りに行った。
琥雅はああそう、と全く興味なさげに呟くと、机上の万年筆を取って、仕事に取りかかり始める。

「(大変そうだなあ)」

カバンに教科書を詰め込んで、ぼんやりと思う。邪魔しないように、声は掛けないで帰るとしよう。
気を遣ってそろそろと教室を出ようとしたとき、

「悪いけど、俺は新緑の妖精でもなんでもないから」

「……ッ!!?」

な、なにを…言ってやがる…!?と咄嗟に振り返ると、琥雅は薄笑いを浮かべて、私の方を向いていた。こいつ…聞いてたな……っ!

「…………ば、バカヤロー!!!」

私の頬が赤く染まったのは、言うまでもない。












咲月攻めのさつこがを考えていたんですがいつの間にかこがさつになってました琥雅くんまじイケメェン



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