遺伝子ってすごいなって思った。

「美月お兄ちゃーん!」

「おー満か。どしたの」

大学に提出するレポートの資料を整理していたら、幼馴染の妹がどたどたと騒がしく我が家に来訪した。勝手知ったる他人の家、とはこのことである。おそらく上の姉が選んだであろうワンピースをどろどろにしてやってきた満は、満面の笑みで俺に両手を差し出した。

「はい!」

「ん?なにかな?」

「美月お兄ちゃんにプレゼントー!」

えへへーと純真無垢な笑い方は非常に幼馴染そっくりである。そこに悪意があるかないかの違いで同じ笑顔がこんなにも違うなんて人間って素晴らしい。
それに満は実の弟妹と異なってお兄ちゃんと呼んでくれる。これはポイント高い。実の弟妹たちは何度頼んでも俺のことを兄さんと呼ぶ。決してお兄ちゃんとは呼んでくれない。最近は頼むと軽蔑の眼差しを寄こすのでもう口に出すのはやめた。

「なにくれるの?」

「えへへへへ!」

そういって満が俺にくれたのはおびただしい数のダンゴムシだった。





「ああ、兄さんダンゴムシだめだったっけね」

コンビニから帰宅した弟妹たちは、静かに涙を流しながら掌からあふれるダンゴムシをどうすればいいかわからなくなっている俺を助けてくれた。実に有能な妹たちである。

「俺は昆虫類全般だめだ」

「女子かよ」

「うるさいぞ暁月」

お前たちは知らないだろうけど昔俺はとある幼馴染に虫がうじゃうじゃいる洞に閉じ込められたことがあるんだ。トラウマだから口にしたくもない。考えるのもいやだ。ちくしょう、今日の一件で思い出してしまったじゃないか。

「働け、俺の頭の中の消しゴム!」

「兄さん大丈夫…?」

割とだめです。



トラウマメーカー白夜と満

120427

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「見えない臓器の名前は」
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