友人の体験談をもとにY子さんちの柚月さんと哉太で書いてみた(一部脚色)
「…………」
ああしまった。やっちまった。
「家の鍵、忘れた……」
あああ俺ってばなんてうっかりさん。
春休み、補習だった俺は錫也と月子とは少し遅れて帰省した。だからというかなんというか、帰省の際にいつも忘れ物はないか聞いてくれるオカンと反面教師となるそそっかしい幼馴染みがいたから普段は忘れることはなかったんだけど…。
「っだー……」
仕方ない、お袋が帰ってくるまで待つしかないか、と思った。が、
「そういえば今日は夜勤だって言ってたっけ…」
だめじゃん。
「…………あっ錫也んち!」
そうだ!俺には先に帰省していた幼馴染みがいた!ようしお袋が帰ってくるまで滞在させてもらおう!と錫也の家に行ってインターホンを押した。しかし返事がない。そしていつもはある東月家の車がないことに気がついた。
「そうだ……こいつんち今日から家族旅行じゃん…」
あああ最悪だあああ!くっそ…こうなったら月子しかいねーじゃん…。
「でも…なあ…」
最悪泊まらせてもらうかもしれないという事実。そうなったら柚月兄に殺されかねない。いやでもまだ肌寒いから野宿は嫌だしな…ええい一か八か!
俺は決死の覚悟で夜久家のインターホンを押した。ピーンポーン、と簡素な音があたりに響く。
「…………」
反応がない。まさか、夜久家も留守…!?と思ったとき『はい』と月子よりも数オクターブ低い声が出た。柚月兄!!
「ゆっ、柚月兄…!!あ、あの俺家の鍵なくて…!」
『……あー?』
あ、これ入れてくれないフラグかも。
「あ、あの、えと、その、」
『…………俺さぁ』
「はいっ!!」
『今から風呂入るから、上がったら入れてやるよ』
「は、はあ…」
『じゃあな』
ガチャン、とインターホンから切れる音。風呂入る前に入れてくれてもいいんじゃないか、と思ったけど入れてもらう身分でそんなこと言えないので、俺は柚月兄が風呂から上がるまで夜久家の軒先で体育座りで待っていた。
1時間ほど。
ガチ。
ちなみに
柚月さん→友人兄
哉太→友人
冬の寒い時期にやられて死ぬかと思った、と遠い目をしながら話してくれました
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