美月→妖狐
白夜→猫又
柚月→天狗
凌→雪女

っていう設定だけどあまり生かされてない。
時代背景は江戸とか

昔、妖怪というものありけり。
俗世に交じりて人を食いつつ、万事知りたり。

「なにこれ竹取のパクリ?」

先ほど貸本屋で借りた本のまえがきを読みながら、俺は首を傾げた。
なんだよ人を食いつつ万事知りたりって。そんなつまみ感覚で人間食わないし。ていうかそもそも最近の妖怪は人間食わないし。

「とんでもねえな」

まあ仕方ないことなのであろう。おそらくこの本の物書きは妖怪がいないということを前提で書いているにちがいないから。

「どないしたん、美月」

前方をフラフラと歩く徹夜明けの凌が振り向いた。どうもしないよ、お前ははやく帰って寝なさい。

「言われんでもそうしたいわ」

「ああコラコラ!凌!雪で寝床つくんない!」

「そうはいうてもなあ、眠いんやもん」

「いい大人の男が『もん』とか使うんじゃないよ」

いやや〜ここで寝る〜と駄々をこね始めた凌。くそめんどい。フラフラと歩く凌をリードしながら歩いてると後ろから軽快な蹄の音が近づいてきた。

「おい、何してるお前ら」

「柚月」

「あっちへフラフラこっちへフラフラしやがって。通行の邪魔だ。轢くぞ」と馬上から舌打ちしてきたのは憲兵団に所属している柚月。罵倒しながらも率先して注意してくれたのは俺たちが他の憲兵団の馬に轢かれないようとの配慮であろう。全くこの男も昔から素直じゃない。

「凌が徹夜明けなんだよ」

「………ああ」

なるほど、といって呟くと、柚月は馬から颯爽と降りた。どうするつもりかと見守る態勢をとっていたら、柚月は俺と凌を近くの川原の木陰へと連れてきた。さて、それから?

「美月、油揚げ好きだよな?」

「え、あ、まあ」

「これなーんだ」

そういって柚月が取り出したのは油揚げ。
その瞬間ぽん!と間抜けな音をたてて、俺に狐耳と尻尾が生える。

「…まくら!!!」

「ウオオッ」

睡眠欲が最高潮だった凌は一目散に俺の尻尾に飛びつくとすぐに寝息をたて始めた。
柚月もやれやれと嘆息すると俺の尻尾に寄りかかり、憲兵団の帽子をぬいで自らの顔にかぶせる。

「…ゆーづーきー?」

枕にされた俺は恨みがましい声で柚月を呼ぶと、柚月は「まあいいじゃん」と笑った。

「どうせ今日は満月で妖力を抑えつけんの辛いんだし」

辛いくらいなら解放しちまえばいいんだよ、と言いながら、柚月も寝息をたてはじめた。うーん、そういう問題じゃないんだけどなあ。妖怪に寛容な世になったとはいえまだ信じられないという人間もいるからこうして化けて暮らしているというのに。

「…まあ、いいか」

騒ぎにならないようにすればいいんだよな。いざとなったら幻術を使おう。
初夏の空気と心地よい風にふかれて、俺はそっと目を閉じた。



白夜がいないとこんなに平和なのね美月さん

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