聖なる夜のクリスマス。
の前日であるクリスマスイヴ。
「特に予定もなく実家で過ごす男が2人…」
明海ちゃんの言葉に美月兄さんと白夜兄さんがギクッと肩を震わせた。こいつら今年も実家にいるのかよ。いい加減彼女つくれや。
「でも咲月先輩も彼氏いないじゃないですか」
「あんたもね満」
「てか私以外皆いないじゃないの」
「…………」
「…………」
明海ちゃんの言葉に全員が耳を塞いだ。唯一婚約者がいる明海ちゃんに言われちゃったら返す言葉もございませんわ。
「ていうか明海お姉ちゃんはイヴなのに蛍さんと約束ないの?」
「蛍は仕事だってさー、だからこうして仕方なく家族サービスに費やしてるんでしょう」
「いや、帰ってこなくてよかったんですけどー…」
「何か言いまして?白夜さん?」
「いいっえー!なんにもー!って言ってんのになんで絞めるのイッタタタ!!!」
明海ちゃんにいいように使われるのを不満に思っている白夜兄さんにとってはまあ不幸かもしれないが明海ちゃんいたほうが楽しいから私はよかったと思ってるよ。口に出して言わないけどね。ちなみに蛍さんってのは明海ちゃんの婚約者さんです。イケメン。
「暁月、ホットチョコレートまだー?」
「はい」
「あんがと」
「白夜おにいちゃーん!新くんが灯油取りに行ったまま帰ってこないんだけどー!」
「あ、やっべ玄関の鍵閉めちゃってた」
「きゃーーー!新ーーー!!?」
「さむ…さむすぎ…しぬ…」
「白夜お前…」
「テヘペロー!」
暖かくて賑やかなこの空間を、私は嫌いじゃない。
ただ、
「なんで私たちも温泉旅行に連れて行ってくれなかったのかなー…」
「もう諦めましょうよ咲月先輩…」
冷蔵庫にマグネットでぺたりと貼られた朝野両親日立両親直筆の『温泉にいってくるので留守番よろしくね!』という手紙を睨みつけてから、長い長い溜息を吐いた。
咲月は温泉好き
ってことで。