08


ぽつり、ぽつり。
外で音がし始めたかと思ったらずいぶんザーザーと降ってきたみたいだ。チラリと外を見ただけなのにぐいと髪の毛を引っ張られる。ふと、下を見れば臨也が少し困ったような顔をしてから、今日は俺を見てて、と言う。


「経験は、あんのか?」

「あるよ。俺、悪い子だから。」


にこり、と笑うそれが作り笑いに見えてそれを見たくなくて臨也の髪を撫でていた手をそのまま引き寄せてキスをした。舌と舌が絡まって少し扇状的になる頬に手を置き、顎を片手ですくい上げて角度を変えて離せば余裕なさげな臨也の表情になる。臨也の手が俺の首に回されると直ぐに俺は臨也をベッドに倒した。


「ん…、シズちゃん、キス下手じゃなかったんだね…。」

「なんだよ、下手だと思ってたのか?」

「うーん、だってあんまり経験無さそうだったから。」

「大して無いことは否定しねえよ。」


シャツに手を突っ込んで尖りを摘む。くにくにと弄ればぴくぴくと反応する臨也が可愛くて、逆の方もくりくりと弄る。


「んっ…あぅ…、シズちゃんの…へんたーい。」


によによと笑いながらこちらを向く臨也にお前のが変態だ、と言ってガリ、と首筋に噛みつく。


「いっ…!?」

「キスよりこっちのがいいだろ?」

「そんなのシズちゃんだけだからね。」


そう言って、臨也も俺の首筋に噛みついた。満足そうにそこを撫でると同じ場所にキスを落とした。俺は臨也のズボンに手を突っ込んで勃ち始めているそれを軽く汲いた。ん、と小さく声を出して嫌みたらしい笑いをした臨也がゆっくり耳元に近づいて来て囁く。


「ね、フェラしてあげようか?」


やけに淫靡的なそのセリフにただ呆然と聞き流しながら拒否権は無いとでもいいたげに臨也は俺のをくわえてくちゅりくちゅりと舐め始めた。


「ん…、」

「ふぁーに、ふぃふひゃん…、」

「くわえたまま喋るな、馬鹿…!」


ごめん、ごめんと簡単に謝る臨也がする行為は相手が臨也だから、というのもあいまってか異常なまでにハマりそうだった。小さく声を漏らすとシズちゃん可愛い、なんて言うのさえも可愛く見えて来て、首筋からうなじの方を撫でてやるとまるで猫のように身を揺らした。


「いざ…や…、そろそろ…。」

「ん…、んく…、」


飲もうとしている臨也を無理やりはがして、臨也の胸のあたりにかかるとちょっとだけ不満そうな臨也がいた。


「別に飲んでも良かったのに。」

「俺がお前にそういうのして欲しくなかったんだ。そんな、AVみたいなことさせるかよ。」

「シズちゃんってAV見るの…?」

「あー、仕事柄というか、なんというか、よく延滞料金かさむ奴らが流してっからよ。」


そういうと、それは見たって言うか見えたって奴だよ、とクスクス笑われた。それがなんとなくバカにされてるような気がしてぐい、とベッドに臨也を寝かせた。


「べったべた。」

「シズちゃんの所為に決まってんじゃん。」

「ああ、そうだな。」


臨也にかかった精液を指で掬ってそのままそれを挿れる。くい、と動かすと内壁が吸い付いて来て、離してくれそうに無い。


「ん…っあ…はっ…、ね、ちゃ…と、そんなと…こじゃな…て、お…っく…。」


こいつ、誘いが上手すぎる。倒しているが故の必然的上目遣いはともかく、半分だけとろけて未だ半分残っている眼も、真っ白な身体も、そのくせ唇だけは綺麗に程よく赤くて、そして、ひくり、と吸い付き、締め付けて離そうとしない後孔も全てが俺の理性を奪って行く。


「指、増やすぞ。」

入り口あたりで止まっていた指を奥の方でガリガリと前立腺を引っ掻くように動かす。それに呼応するかのように臨也は高い声を上げて鳴く。それが俺の頭に響いて、どうにも歯止めが利かない。ぐちぐちと動かすスピードを上げてしまえばそれに答えるように喘ぎ続ける。


「ひっ…!あっ…!んぁ…!や!ああんんっ…!」

「…臨也、乗れよ。」

「ん…っあ…!何、シズちゃん、そういう趣味…?」


余裕無いくせに笑うその顔を崩してやりたくて、愉しげに笑うと、臨也は、シズちゃんなんか悪い顔してるー、なんて言う。言っておくがお前だってずいぶん愉しそうな顔してたっての。


「ん…、っふぁ…!」


ずちゅ、と少しずつ腰を下ろしてくる臨也をじっと見ていたら、シズちゃんやらしー、なんて囁かれた。そんなことしたら、俺だって黙っている訳にはいかない。全部入りきったそのすぐ後にゆっくり動く臨也の腰を掴んで、揺らす。


「え…!?シズちゃ…、ひゃあ!やだぁっ…!」


ぐちゅりぐちゅりとした卑猥な音と臨也の耳について離れないような喘ぎだけが部屋を占拠した。ひっきりなしに上がるそれを残したくて、乗っかっていた臨也をそのまま後ろに倒して抱き締める。すると、喘ぎしか上げなかった臨也が俺を必死に求めて来て、背中に爪を立てた。どれくらい時間がたったのだろうか、数秒なのか数分なのか、それさえも曖昧なくらい抱きしめ合うとしばらくして目がチカチカしてきて、そのまま臨也の中で果てる。中に吐き出された精液に反応したのか臨也も達した。


「ふぁ…!や…、あああぁぁぁ!!」


こてん、とそのまま気を失った臨也から抜いて、頭を撫でる。


「忘れられるかよ…、こんなの…。俺はぜってー忘れてやんねえよ。」


あんなに叫ばれたのに…、忘れてたまるか。首筋にお互いにつけた痕を軽くなぞる。ヒリヒリする背中の痛みさえも今、この状態を示唆するものだというのに、それが何故その痛みを発しているのかさえわからなくなどなりたくない。ふと、感傷的になった気持ちに首を振り、ベッドに突っ伏す臨也の後始末をしなければと立ち上がった。





2010,05,30

8話。

げろ甘い裏を書こうとした結果がこれです。感傷的になる静雄さん。まるっとただの甘裏だけにする予定でしたが、静雄に気持ちを吐露していただきました。臨也の前では言えないことは葛藤ぐるぐるとか。








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