くじ引きCP第一段/青葉×杏里
薄くかかった前髪を払って彼は小さく笑った。なんの変哲もないフレーム眼鏡を失礼します、といって外し、くしで髪の毛を梳き、細いゴムでパチンと2つに結んだ。なんだか、私じゃないような気がして不思議だった。
「どうですか?」
「なんか…、不思議な感じです。」
「杏里先輩はすごく魅力的なんでもっと自分に自信を持っていいと思いますよ。」
彼はまだ少し幼い顔で笑い、それじゃ行きましょうよ、と私の手を取った。それがまたやはり気恥ずかしくなった。いくら自分が額縁の向こうの存在をどうでもいいかのように扱っていても、それ相応の常識は持ち合わせている。それを口に出せば、彼はまた笑って答えるのだ。
「大丈夫です、今は誰も杏里先輩を杏里先輩だと思いませんよ。だって、こんな綺麗で可愛い杏里先輩を知っているのは僕だけですから。」
「そう…ですか…。」
でも確かに今はこの繋がれてる手についていくしかないのだ。だって、今は眼鏡を外していてよく前が見えない。そんなことを言い訳に私は彼にも寄生して生きていこうと考えているのだろうか。
「……青葉くん。」
「はい、なんですか?」
「ドーナツ、食べませんか?」
そう言ってポケットに入れていた割引券を見せる。そういえば、朝確かにチラシが入っていた。なんで覚えてたのかわからないけれど。ただ、今日の私が普段の園原杏里では無いと彼がいうのならそれに従って、今日だけは誰かに寄生して生きるのは止めよう、と思った。
「いいですね!行きましょうよ!」
今度笑った彼はほんの少し大人に見えた。
(エンゼルクルーラー)
日記ログ
2010,05,15
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