03/全3話予定


《臨也、準備はいいか?》


とんとんと肩を叩かれた後に振り返るといつもお世話になってる運び屋のセルティがいた。もちろんオーケーだよ、という意味を込めて小さく笑って丸を作れば興奮したようにPDAに文字を打ち、そういう風に笑った方が良い!と念を押された。




無条件幸福 03




小さな結婚式場を1つ貸し切った。それはまぁ…、せっかくだから結婚式を上げたらどうだい、という新羅の提案であり、俺達2人が婚約届を提出した相手でもあった。ちなみにドタチンは数秒程フリーズしたがその後いつもの爽やか笑いを出して保証人の欄に名前を書いてくれた。正直、未だに実感が湧かない。確かにあれからシズちゃんと俺はラブラブ…とまでは行かないもののそれなりの仲であり、それなりに婚約者同士の事もする。それでもやはりシズちゃんがぷっつんして俺に襲いかかるのは変わらないし、俺は割と楽しく池袋を逃げ回る。それでも池袋に来るな、とは言われなくなった。それがちょっと嬉しかった、けど仕事がはかどるよ、とか結構可愛くないこと言ってそんな姿見せないようにしていた。それなのに、1回俺の何かに気づいたシズちゃんは前から比べると、とんでもなく俺のことには敏感になったみたいで直ぐに気づかれた。それがちょっと悔しくて、でもすごく嬉しかったのは内緒だ。
そんな感じであまり日頃と変わらずに今日を迎えてしまった。それ故に何だか気恥ずかしい思いが入り混じる。そう考えると俺も大層、人間らしくなったな…、と俺は昔から人間なのに出てきた思いになんとなく笑った。


「臨也さん。」

「あー、君達か。何、誰から聞いたの?」


振り返ると来良学園の3人組がいて、皆一様な顔をしていた。特に正臣くんなんかいつもはキツい目で睨んでくるくせに今日はなんとなく優しい顔をしていた。


「あんたの妹さんに教えて貰ったんですよ。それにしても、臨也さんは今日だけまともに見えますね。」

「何それ、いつもの俺はまともじゃないって言いたい訳?」

そーゆうことですよ、と珍しく笑う。それに釣られて杏里ちゃんも笑う。それじゃあ、後でと愛想の良い笑いをした帝人くんを最後に3人は出てった。その数秒後にまたドアが開いたから何か忘れものかと声をかけようとしたらそこにいたのは3人組ではなくシズちゃんで、言葉が喉まで出かけたものの再びそれは仕舞われた。


「臨也…。」

「ん…、何…?」

「その…、き、綺麗…だ…。」

「あははっ…!まぁ、この格好じゃ綺麗って言葉のが合ってるのかもね。」


シズちゃんが突っ立ったままだったから手を引いてストンと座らせると隣同士になる。シズちゃんの白タキシード結構似合うかも。今日はいつもしてるサングラスもかけてないし。なんだろ…、俺は真っ白とか似合わないと思う。不本意ながら公平なじゃんけんの結果、所謂純白のウエディングドレスは俺が着ることになった。シズちゃんのあの勝ち誇った顔ったらねえ。


「シズちゃんさ、今日で俺達本当に結婚しちゃうのかな。正式とかじゃ無いけど、子供の頃は結婚式が結婚の定義だとか思っていなかった?俺はそうだったんだけどさ、シズちゃんは違う?」

「そう…思ってたな…。」

「でもさ、実際はあの紙1枚を区役所に提出しないことには認められないし、結婚式だって男女でしか上げられないし、今回は神父さんもいない。つまりさ、自分達の中じゃないと俺達は結婚しているという訳じゃないし、他人から見れば俺達は赤の他人、差し詰め説明して恋人ってことにしか認識されない。それでもシズちゃんはいいの?」


うわぁ、何だろうこの今更なセリフ。普通はもっと前に言っておくものだ。確かにシズちゃんから言って来たとは言ってもシズちゃんは好きな人とは結婚するべきだ、といういまいちわからないイコールで結んでいる。だから、今更だが心配になったのだ。俺がシズちゃんのこれから訪れるかもしれない幸せを壊してしまってもいいのか。俺はシズちゃんと同じ染色体の人間だから子供は産めない。


「そんなすげー今更なこと言ってんじゃねえよ。俺の人生お前に掛けるっつってんだろ?今までも。それでも不安になるっつーならいくらでも言い続けてやるけどよ。」


そう言って、膝のスカートの上に置いておいた手を上から掴まれる。シズちゃんの手でかいな。にしても、今のシズちゃん格好良すぎだろ。なんかびっくりしたじゃないか…!


「ん…、ごめん。ありがと。」


それで先ほど運び屋に言われた笑顔をシズちゃんに向けてみる。そしたら漫画みたいに顔を赤くしたシズちゃんがいた。


「臨也…、お前…、それ反則だろ…。」

「えー?何が反則なの?俺は愛想笑いじゃない満面の笑みをシズちゃんに向けてあげただけなのに。」


にやにやと先ほどとは違う自分でもいやらしいと思う笑いを向ければ、だんだん収まって来たのかシズちゃんはクールダウンしていった。
かさり、とやけにレースに包まれた右側の花飾りを掴んだかと思うと唐突にシズちゃんがキスしてきた。触れるだけで終わらないそれはシズちゃんにしては上手かった。


「ん…ふぅ…んん…。」


漏れる声に気づいたシズちゃんは慌てて離れた。舌に舌を絡めて口の中を蹂躙するように呼吸を奪ったシズちゃんは片手で俺を支えたままだった。


「シーズちゃん。予行練習にしては長すぎじゃあない?」

「うっせえ!お前のキスがあれなんだよ…!卑猥すぎるんだよ!」

「え?何、俺ってそんなにエロい?やだなぁ、シズちゃん。そんなに発情しないでよ。」

「ちが…わねえけど、今は違う!」


わたわたと慌てるシズちゃんを見ながらキスに翻弄された自分を何とか押さえた。あ、やばい。時間ギリギリ。


「シズちゃん、時間無いから行こうよ。」

「え、あ、おう…!」


後ろ踏まないでね!と注意した後に迎えに来た新羅と運び屋にレースを持つのを手伝って貰った。

飛び上がるブーケがどうか次は君の元に落ちますように。




無条件幸福 03




(シズちゃん、一緒に暮らそうよ。)(え、あ…え…?)(池袋に住みたいんだったら俺が事務所を移動するからさ。もしくは事務所と自宅をバラバラにするとか。)(一緒に…住…む…。)(あれ、シズちゃん?おーい、シズちゃーん?)




2010,04,25

3話。

これで終わりです。
後日談で同棲話を書けたらな…とは思ってますが、要望があったらと言うことで←
連作にお付き合いありがとうございました!








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -