01(全3話予定)





「臨也、俺と結婚してくれないか!」

「は?」



無条件幸福 01




そいつは真剣な顔して躊躇いもせずに言い放った。
ばっ!と出された真っ赤なバラの花束とバーテン服は否が応でも合っていた。一応、言っておくが目の前の人物の職業はバーテンでも花屋でも俳優でも何でも無い。ただのテレクラの借金回収業者だ。
では何故このような事態になったのか最初からおさらいしてみよう。今日の俺は池袋で仕事があった。あいにくそれは西口付近でシズちゃんとの遭遇は回避仕切れないだろうと思っているため、いつもは何か策を講じる。しかし、残念ながら今回はシズちゃんを西口付近に寄らせない策を講じることが出来なかった為、大人しくある程度からかって逃げようと思っていた…、が、なんと今日はシズちゃんに会わず、無駄な暴力を受けずに仕事を終わらせることが出来た。上機嫌になった俺は滅多なことでは決して思わないがあの無愛想な秘書にケーキでも買ってってやろうかと気に入りの店で購入した。(勿論、あの秘書が愛する弟やらの分も一緒に買ってやった。)
そして、家に帰って玄関先でピザ屋の表示にしてる波江からのメールに気づき、中身を確認すれば夕食の買い出しの為、少しの間、家を開けているとのことだった。時刻は現在から30分程前だった。
なるほど、と思いドアを開けると目の前に真っ赤なバラを持ったバーテン服の人物がいた。ここで話は冒頭に戻る。どっかで頭を強く打ったんじゃ無いかと思うほどの珍発言だ。一瞬、思考が止まった。もしこれが作戦で今日こそシズちゃんが俺の息の根を止めようとしてるなら間違いなくシズちゃんの勝利だ。俺は敢えなく地に臥すだろう。カンカンカンとゴングが鳴り、レフリーに勝利を告げられ、チャンピオンベルトを巻くシズちゃん……あれ?話が逸れたね。まぁ、つまりそれだけ俺は混乱していると言うことだよ。


「臨也、直ぐに返事をくれとは言わない。ただこれは受け取ってくれ。」

「え?あ、うん。」


そう言われて手に抱えられていた意外と大きなバラの花束を渡された。シズちゃんが持ってたから小さく見えたのかな…なんて話が再び巡る。違うだろ!今、考え言わなきゃいけないことは!
つか、なんで俺受け取っちゃったんだよ!


「ねえ!ちょっとシズちゃん!どうしたの!?どっか頭打った?唯でさえ少ないシズちゃんの脳細胞が更に激減するような真似はそれ以上バカになるから止めといた方がいいよ?」

「バカ…っ!違うだろ…。」


なぜか頬を赤らめて否定をするシズちゃん。じゃあ、なんだ。頭打ったんじゃなかったら雷落とされたのか?ああ!大自然の恐怖だね!しかし、シズちゃん、雷に当たって死なないなんて一体どんな構造してるんだよ!相変わらずの化け物だね!別に現実逃避とかそんなんじゃ無いから!つーか、うんこの状況どうしよう。


「うん…、あのさ…、シズちゃん、ケーキ食べる?」

「……おう…。」


何を口に出すか迷っていたら手に持ったままだったケーキがあった事に気づいてつい口に出してしまった。え、何これ馬鹿じゃないの?とりあえず、波江の弟くんには我慢して貰おう。


「紅茶で良いよね?砂糖はいる?」

「いる。」


そう言われて、俺、何真面目にお客さんにするように対応しているんだと思ったらなんだか腹が立ってきたのでシズちゃんのカップにありったけの砂糖を入れてやった。そわそわして見ていたのにシズちゃんはなんと、がぶ飲みして平然としていた。くそ、甘党だったのか。


「で…さ…、あのシズちゃん…、この紙は何かな…?」

「見りゃわかんだろ、婚姻届だ。」

「よし、シズちゃん。落ち着こう。君はついに子供でも知ってる法律までわからなくなったんだね。」

「ノミ虫…、俺はノミ虫のことを愛してる。一生幸せにしてやる自信がある。だから、俺と結婚してくださいいい!!」


ついにシズちゃんは土下座し始めた。内容が内容じゃなきゃ俺はかなり嬉しかっただろう。うん、どうしようこの展開。波江が帰って来たら困るなぁ…。


「あ、もしもし新羅?シズちゃんがおかしくなったんだけど…、ん、うんうん、シズちゃんが俺に熱愛宣言してきたの。……いやだから嘘じゃないって。あのさ…、俺がこんな馬鹿な嘘つくと思う?うん…、…つまりさ、助け…、…シズちゃん…?」


このまま堂々巡りに陥るのはごめんだととりあえず、1番身体的なことでは頼りになりそうな闇医者に電話してみることにした…のだが、見事になぜかシズちゃんに持ってたケータイを取られた。何、やってんの。つか、いつ君は元に復活したわけ?イライラをぶつけようと不機嫌な口調でシズちゃんに低く文句を言い出た。


「俺が目の前にいんのに他の男と話すなよ。」

「え…、ちょ…、わっ…!」


きゅん。
え?何、今の音、何だって?
俺が知りたいよ。むしろ、シズちゃんにきゅんとする時点で気持ちは自殺したいくらいに急降下だよ。その筈だよ。何、抱きしめられてきゅんとか普通に感じる気持ちと違うだろ。くそ、馬鹿、静まれ!心臓!
今日のシズちゃんにペースを乱されただけなんだと、頭を必死に冷静にする。
ああ、もう認めてやるさ。俺はシズちゃんがおかしくなる前から君のことが好きだったさ。







無条件幸福 01



(…名前。)(ん?どうした。)(名前書くっつってんの!!早くしないと書かないからね!)(臨也…!)(あー!うるさい!うるさい!馬鹿!シズちゃんのアホ!それ以上言うな!)





2010,04,20

静雄の日記念。
シズちゃんとイザイザが結婚するまでの道のりを描いたスペクタクルロマン。という名のギャグ。しかし、ガチ。

第1話/全3話分









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