06


「とりあえず、名前だな。折原臨也、いざや、が名前だ。」


そう言えば怪訝な顔してそれ本当?と聞いてくる。だから俺も本当だ、と返す。漢字どう書くのって言われたから地面に臨也と書いてやった。


「これで、いざやって読むんだー、へぇー。カタカナから昇進だね!」

「で、だ。俺とお前は同い年で同じ学校。学校から存在を隠蔽されている理由は当時の教師を自殺未遂に追い込んだから。ちなみにその状態になってる原因はその自殺未遂に追い込んだ教師の婚約者に刺されたから。」


聞いていた臨也は1つ1つ飲み込むように真剣な顔をして理解していた。俺が知りたいのはここからだったりする。


「それとお前は生きている…、お前は自分が生きていることを知ってた筈だ。なんで言わなかった。」


先ほどの新羅の電話の重要な部分と言われたことだった。折原臨也は2年前に1度目を覚まして病院を抜け出しているそうだ。そしてその3日後に池袋の路上で保護されたらしい。


「……言えなかったんだ。シズちゃんは俺のこと忘れちゃったみたいだったし…。」

「どういうことだ…?」


再び言いにくそうに顔を下げた臨也だったが、正直こっちもその部分は知りたい。忘れちゃったみたい、つまりそれは以前から俺はこいつのことを知っていたことになる。ひたすら頭を回して記憶を思い起こすが昨日会ったばかりの臨也しか俺は思い出せない。だがしかし先ほど抱きしめた臨也の既視感に記憶が違和感を生じた。俺は臨也を抱きしめた記憶が身体にあるのか?


「俺、2年前にシズちゃんに会ってるんだ。病院から抜け出して、夜中を着の身着のままで靴だけ探して履いて池袋を家に向かって走ってたんだ。その時にシズちゃんに肩を掴まれて、それで…、しばらく一緒にいた。でも、それ以降はわかんない。俺が幽霊のように存在してる理由はわかんないし…。」


再び泣きそうになってる臨也を抱き寄せた。今更、触れられるという不思議な感覚を親身に感じた。そして子供をあやすようにポンポンと背中を叩けば、やっぱり同じのように子供扱いするな!と目を向けてくるも今回はずいぶん覇気の無い睨みだった為抱きしめ続けた。幽霊のくせに暖かいのは俺がこいつを触れるからなのかもしれないと自己完結をし、未だぐずぐずと泣いている臨也の目元を指でなぞって拭いてやった。


「おら、もう泣くな。男だろ?」

「…っうっさいよ!シズちゃん!」


ゴシゴシとこすったら赤くなるぞ、と思ったけど俺以外が触れないならハンカチを貸してやるわけにもいかず、しょうがないと溜め息をついて臨也に向き直った。


「臨也、病院行くぞ。お前の本体に会いに行く。」

「……うん。」


そうやって臨也を見て思う謎がある。俺は何故2年前のことを忘れている。日も浅く普通にしていたら忘れるような月日ではない。3日間という大きな時間の流れが綺麗に削り取られて俺の中から消えている。それは一体なんなのか。歩きながら、状況確認をしながら話す。


「つーことは、お前は俺のこと最初から知ってた訳か?」

「そうでもあるし、そうでもないというか、シズちゃん…って名前を口に出したらシズちゃんのこと思い出した。」

「そうなのか。」


最初はなんとなくこっちに視線を向けてた感覚があって、それでもシズちゃんが俺のことスルーしようとしたから、もしかしたら見えてるのかなって声を掛けたんだ。そしたら本体にこっち向いてくれて嬉しくてそのまま話し続けたんだ。
臨也はそれを嬉しそうな顔で話した。くるくるといつものように空中を足で蹴って回りながら上機嫌に。


「そういえばさ!この格好のままじゃ見えないけど、シズちゃんと俺って同い年で同じ学校なんだよね?」

「ん…?あぁ、そうだな。」

「子供扱い禁止!」


びしりと指を俺に向かって指して言い放つ。その姿勢がなんだか逆に子供らしく見えたけど、ここで言えば拗ねて口を聞いてくれなくなるかもしれないと思い、ああ、わかったよ、とガシガシと頭を撫でる。


「っ…!だから!それが子供扱いって言うんじゃん!ちょっとでかいからっていい気にならないでよね!」

「ああ、つい癖で、悪い。」

「シズちゃんのバカ、甲斐性なし、あほんだら。」

「お前…、あほんだらって…、もっとかわいい言葉使えないのか…。」

「俺に可愛さを求めるシズちゃんが悪い!」


わいやわいやと問答しながら歩いたら道行く人にこちらを向かれた様子がたまに入ったけど、面倒くさいからシャットアウトした。どうか変な人に見られてませんように。







2010,04,18

6話。

伏線回収せねばならない筈なのに伏線を増やしてどうする…!そんな話です。
次は本体に会いに行きますよ…!









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