今まで自分がついて来たあいつに対する嘘の気持ちと本当の気持ち。俺は不器用だから簡単に大嫌いな相手だった奴に矛盾した気持ちを言えなくてただ変わらずに大嫌いだと伝えていたことを後悔した。それに、俺の中の好きな所と嫌いな所の割合が酷く片方に傾いてて、こんな自分に誰かを愛したり、愛して貰う価値は無いと思っていた。自分の力はコンプレックスの塊だ。さらに言うならばこの短気な性格も不器用な気持ちの伝え方も面倒くさい人間の象徴のようだ。だから自分から接触を絶った。そうすれば回りに被害は講じない。
高校に入って臨也に出会う前までは確かにそうだった。同じクラスだった折原臨也は俺にひたすら接触をしてきた。話掛けたり、2人1組でペアを組むときも、昼食の時間も、果ては授業をサボる時まで一緒にいた。正直、嬉しかった。こんなにも人に優しくして貰ったことなんて無かったと思う。だから逆に怖かった。いつかは嫌われることが。愛した人に憎まれることが。大切だからこそ愛しいからこそ俺は臨也を自分から嫌おうと無理矢理にでも矛盾した気持ちを突き出せばいいと思っていた。


「臨也…、お前なんでいつもついてくんだよ。うぜえよ。どっか別のとこ行きやがれ。」

「シズちゃん…?」

「その呼び方も止めろっつってるよなぁ?」

「嫌だ。」

「あ?」

「シズちゃんから離れるのもシズちゃん呼びを止めるのも。」

「……んでだよ…!」


とてとてと購買で買った昼食を片手に持って屋上の端から俺がいる入り口まで来たと思えば、びしりと指を指されてまくしたてられた。


「だってシズちゃんは誰かに愛して貰いたいって顔してるもん。俺は人間を愛してる。それにシズちゃんは含まれてる。でもね、気づいちゃったんだ、シズちゃんが他人に愛されることに飢えてるって。だから俺はシズちゃんに愛を捧げようと思ったんだ。だからね、お返しに俺の方も愛してみてよ。」


そう言いながら泣いていた臨也が不思議なくらいに綺麗で、まるで本当に泣いているのかと思うくらいのその姿に何故か知らないけど、笑ってしまった。


「ちょっと!なんでシズちゃん笑ってんの!」


そう言って笑った臨也がいて俺はなんとなくそれが嬉しくて仕方なくて泣いた。人を愛していいと愛されていいとまるで諭すように言われているみたいだった。


「人間を愛してるってお前はどっかの宗教団体の信者かよ。」

「うーん、宗教団体は酷くない?第一俺が人間信者だって言うならシズちゃんは人間不信者でしょ。」

「ああ、そうだったかもな。でも、お前のおかげで変われた気がする。」

「あはは…!シズちゃん良い顔してるよ。あ、良いって別にカッコイいとかそういう意味じゃないからね。」

「わかってるっつーの、眉目秀麗さん。」

「シズちゃん、それひがみだよ。ひがみ。わかってる?」

「うっせえ!」


もう昨日を探してた俺はいない。
それからの生活はちょっとずつ変わっていった。クラス替えして同じクラスになった小学校が同じの新羅が積極的に解剖させてくれと煩いが良い奴だってことはわかる。臨也と同じクラスの門田も良い奴だ。真剣に話を聞いてくれるし、まるで俺の中ではストッパーのような存在だった。4人で昼食を取るのが普通になっていた。いつか忘れたけど臨也にお前は人間清浄機みたいだ、と冗談かまして言ったら俺は驚くべき効果を発揮するから高いよ?とケラケラと笑われた。
確かにそうかもしれない。中毒性付きのな、と付け足してキスをすると臨也はさらにからかってる口調で、用法・容量をお守りくださいなんて言って笑って同じように俺にキスした。臨也は俺にとって目に見える愛のような存在だった。俺の世界の神様のような存在と言っても違わないかもしれない。そう思ったけれど言ったらバカにされそうだから言わなかった。


「あ、シズちゃん。今日ゲーセン行かない?新羅とドタチンは行くみたいだけど。」

「行く。お前の記録打ち破ってやる。あと新羅のも。」


多分、今まで生きてきた人生の中で何よりも楽しい日々だった。新羅、門田、そして臨也。人と付き合っていくのが楽しい。

あれからずいぶんと経って、俺はそれなりに人並みに生きていけていると思う。ガキだった昔と変わって力の使い方も理解することも出来た。そうなる内に学生の頃の付き合いは薄れていったかもしれない。けれど、根底にはやっぱり臨也がいた。お互いに大人だから会うことなんてなかなか無いけれど会ったら会ったでやっぱりそれなりに衝突する。それがなんとなく当たり前な気がしていた。自販機やナイフが飛び回るのは日常茶飯事でそれが終わってなんとなく話して終わる。そんな付き合いだ。


「シズちゃんー、今日は自販機1つと標識1つ壊したよー。ちゃんと元の場所に直しときなよー。」

「お前はちゃんとナイフ回収しておけよ。」

「言われなくても、もう回収してまーす。じゃ、シズちゃんまたねー!」

「おう。シズちゃん呼びは止めろよなー。」


そう言って去っていく背中が地球が丸いことを考えて、自分の後ろに繋がっていると思う自分が笑えた。





2010,04,11

下に続きます。

シズちゃんが大変にロマンティックな性格になっております、すみません。
本当は1話で終わらせる筈がつい長くなってしまったので残り半分は次に。











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