02


薄暗い自分の部屋のしかも布団の中に入って寝に入ろうと意識が飛びかけた時だ。あろうことがイザヤが人の布団の中に入って来た。


「おい。」

「何かな?シズちゃん。」

「幽霊って寝るのか?」

「寝ないんじゃないかな。」

「じゃあ何で人の布団に入ってくる。」

「何でだろうね…、」


何でだろうね、シズちゃんと一緒に寝たかったんだ。ほらまだ俺、子供だし?シズちゃん曰くガキんちょだし?子供が1人で寝られない日があるのは当たり前だよね。だったらさ、一緒に寝ても…いいよね?

なんてつらつらとした言葉を並べるんだこいつは。そんな理由で一緒に寝たいとか馬鹿じゃねえのって言ってやって、その上で幽霊は寝ないんじゃ無かったのかよと突っ込んでやろうと思っていたのに口からはおかしな言葉しか出なかった。


「…勝手にしろ。布団せめえからこっち来い。俺が風邪引く。」

「わっ!ちょっとシズちゃん!?」


まだ寒い春先の夜にはちょっと冷ための体温でぬくい。なんつーか、簡易抱き枕みたいで気持ちいい。それにちょうどいいサイズだ。なんかすっぽりしている。ちょっと細ぎすな気がしないでも無いけれど、いい匂いがするから気にしないでおこう。


「なんかお前ちょうどいい…。」

「お、俺はちょうどよくなんか無いよ!やっぱ俺寝ない!そっちの隅で座ってるから!だ…から…!離して!」

「んー、無理…。」

「てか、シズちゃんもう寝てんの!?」


腕の中でもがき続けるイザヤがなんだかうざったくてそのまま抑え込んでいたはずなのにバシバシと人を叩こうとするので面倒だからどうにか出来ないかと思案するも思いつかなく、とりあえずなんかしようとした筈なんだけど今何をしたかすぐのことなのにもう眠くて寝てしまった。







「シズちゃんさ、結構寝相悪いでしょ。」

「あ?」


朝起きたらイザヤがバキボキと関節を鳴らしてるのが見えた。ゴシゴシ歯を磨いていたら心底嫌そうな目でこちらを見た。


「一晩中シズちゃんの抱き枕にされるなんて思わなかった。それに…、いたいけな顔して色欲魔だったなんて。」

「ひょっほまへ!」


ガラガラと口を濯いでイザヤに詰め寄る。テーブル越しに向かい合うとイザヤがまさか覚えて無いの?なんて顔でこっちを見るもんだから余計に何があったか聞かなければならないと思ってイザヤを問いただした。


「今の発言はどういうことだ。」

「どういうってシズちゃんが抜け出そうとする俺にキスしたこととか、さらにその所為で頭がフリーズした俺の首筋に噛みついたり、鬱血するくらいキスしたりして痕ついたりとかが色欲魔みたいってことかな。」


ガーンと頭に金だらいを落とされたような衝撃を食らった。え、何、俺そんなことしたの?無意識って怖いな、おい。それより幽霊にキスするとか何なんだ俺。そこまで落ちた奴だったのか。終わったな、俺の人生。


「あー、シズちゃん?」

「………あ、その悪かった。悪かったけど俺も落ちてっからそんなに強く言わないでくれ。」


ちらりとイザヤの方を見ると呆れたような顔をしながらもういいよ、過ぎたことは基本的に気にしないタイプだから。それに俺は人間を愛してるんだ。愛すべき人間からの愛情表現だと思えば幸せなことだよ。なんて相変わらずの表情で笑う学ラン姿のイザヤはやはりちょっと幼く見えた。ん、学ラン?


「お前さ、他の服着れるのか?」

「さぁ?俺はシズちゃん以外触れないからわかんない。」

「でも俺はお前の服も触れるぞ?」


言いながらちょいちょいと学ランの端っこを掴んでみる。


「なにシズちゃん脱がせようとしてんの?」

「ちがっ…!誤解だ!つか確かめようとしただけだ!」


すぐに手を引いたらけらけらとイザヤに笑われた。


「シズちゃんさぁ、そこまでしなくていいから。てか、からかっただけなのにそこまで反応されるなんて思わなかったし。てかさ、シズちゃん時間大丈夫なの?」

「……やべえ!?おい!もっと早く教えろよ!」

「だってタイミング逃しちゃったんだもん。」

「ああもういい!早く行くぞ!」


そうやって手を引いてドアを開けて走るとまた池袋の1日が始まった。ああ、トムさんに怒られないようにしなきゃいけねえな。


「おいイザヤ!」

「なに!?シズちゃん!」

「今日学校行くぞ!」

「何で!?」

「お前の格好が学生だからだろ!何か手がかり掴めんだろ!」


引いた手の体温が変わらないくらい冷たかったけど、とりあえず今は事務所まで走った。小さい声だけど、うん。なんて聞こえて良かったと思う。







2010,03,17

2話。
シズちゃんとイザヤさんとの生活風景が今回のテーマでした。
シズちゃんの無意識の部分は2.5でいつか書けたらいいなー。次はお話しが進みます。学校行きます。イザヤの何かがわかります。そんな感じです。








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