00 prologue
「おにーさん、おにーさん。」
「……?俺か?」
「そー、そー、おにーさんだよ。」
「俺になんの用だよ。」
「おにーさん、俺が見えるの?」
「は?当たり前だろ。」
「良かった。久々に会えたよ。はじめまして、おにーさん。」
そいつは自分が見える奴なんて珍しいと楽しそうに笑った。話し相手なんていつぶりだろうなんて言うからずいぶん寂しい奴なんだな、と自己完結しようとした。それは、まぁ、叶わなかった訳だが。学ランを着た男がゆっくりとくるくる回って空中で逆さまになった。
「おにーさん、名前は?」
「………平和島静雄。」
「あははっ!珍しい名前だね。」
「お前は?」
「ん?」
「お前の名前を聞いてんだよ。」
「あー、俺は名前忘れちゃったんだよね。整理番号138番って呼んでくれればいいよ。あ、ちなみにこれはね天国に行く人だけが貰えるプレートなんだよ?ま、そこの列から逃げ出したのは随分昔になるから138番は遠い過去の話だよね。」
138番とやらは突拍子も無いことを言い始めた。ちなみに俺は生まれてこの方霊感があるなどと思ったことは1度も無い。記念すべき1回目だと喜べるようなものでは決して無い。
「呼びにくい。」
「まぁ、そう言わずに仲良くしてよ、シズちゃん。」
「なんだその呼び方は。」
「静雄でしょ?だからシズちゃん。」
「気持ち悪い呼び方すんなよ、138番。……お前ポチとかじゃダメか?呼びにくい。」
「流石に犬と同じカテゴリーは嫌だなぁ。」
楽しそうに俺の周りをくるくる回っている。うぜえ。この上なくうぜえ。しかし、路地で誰もいないのにキレちまえば頭がおかしい奴なのかと思われる。うざい、うざい。ん…?ああ。
「イザヤ。」
「…?何それ?」
「お前の名前はイザヤだ。138番何だろう?語呂合わせに丁度良い。」
「イザヤ…イザヤ…かぁ。いいよ、俺の名前は138番改めイザヤ。よろしく、シズちゃん。」
その日からおかしな幽霊だかよくわかんないイザヤと知り合いになった。
2010,03,11
日記から
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